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ドイツは景気刺激策に取り組むべきだ――EUが日本型デフレに突入しないために:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
世界中で経済が伸び悩んでいる。中でも深刻なのはEUだ。けん引役だったドイツまで2四半期連続でマイナス成長となれば、EU全体が90年代の日本のように長いデフレに突入しかねない。
しかし「ドイツ人に告ぐ」。もしデフレに落ち込んだら、国内での投資は一斉に停滞することになるだろう。そして収入が減るかもしれないと考える一般のドイツ人は増えて、皆がタンス預金などにシフトしていくことになる。お金の流通にブレーキがかかれば、それこそ経済の再建など一頓挫するに決まっている。
ドイツが2四半期連続マイナス成長、いわゆる「景気後退」に陥っても、なお財政規律を守ることに固執するだろうか。来年、ドイツは新発債をゼロにできるという。先進国では異例の健全財政になる。しかしその「健全さ」はユーロ圏の周縁国(ギリシャやポルトガルなど)の「犠牲」の上に成り立っている。なぜならドイツの競争力が強いのは、ひとつにはユーロ圏という固定相場制があったからだし、さらにはユーロそのものの評価が周縁国も含んでいるから、ドイツにとっては「有利」であるからだ。
その意味では、ドイツはユーロ圏がデフレに落ち込まぬよう財政規律を多少緩めても財政主導の景気刺激策に取り組むべきだと考える。いったんデフレになったら、それこそEUは失われた10年に突入するかもしれないからだ。
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