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「普段と同じ」をさりげなく 東急多摩川線の「キヤノンダイヤ」が見事:杉山淳一の時事日想(3/5 ページ)
この夏、東急電鉄が興味深い施策を行った。7月7日から9月26日まで、平日早朝に東急多摩川線と池上線で増発した。その理由は意外にもキヤノンが関係していたらしい。調べてみたら、これはなかなか粋な施策だった。
その夏、6000人が出勤時刻を繰り上げた
東急電鉄が実施した「キヤノンダイヤ」。キヤノンとはもちろん、カメラやプリンターのメーカーのことである。キヤノンの本社は東急多摩川線の下丸子駅が最寄りだ。そしてキヤノンでは夏季に就業時間を変更している。知人によると、東急多摩川線と池上線のダイヤ変更は、キヤノンのタイムシフトに連動しているという。
キヤノンのWebサイトを探したら、確かに「就業時間変更のお知らせ」というプレスリリースが発表されていた。対象期間は7月7日(月)〜9月26日(金)。東急の増発期間とピッタリ一致する。始業時刻は08:30から08:00へと30分繰り上がり、終業時刻は17:00から16:15へと45分繰り上がっていた。東急多摩川線の増発時間帯にちょうどよい時間帯だ。
東急池上線の増発はキヤノンとは関係ない。これは東急多摩川線に連動しただけと思われる。東急多摩川線の電車と池上線の車庫は共通で、池上線の雪が谷大塚駅に隣接している。東急多摩川線のダイヤを変更すると池上線に影響が出る。
ところで、東急電鉄のプレスリリースは6月20日付け。キヤノンのプレスリリースはその10日後の6月30日だ。まるで東急はキヤノンの就業時刻変更を事前に知っていたようだ。もしかしたらダイヤ変更の要請を受けたかもしれない。タイミングが良すぎる。見事な連携だ。
その真偽について、東急電鉄の広報に問い合わせた。
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