新幹線と競え! 並行在来線にも特急列車が必要だ:杉山淳一の時事日想(4/4 ページ)
来春に北陸新幹線の開業を控え、第3セクターによる並行在来線の準備も進んでいる。各社のWebサイトでは運行計画もうかがえる。この中で、あいの風とやま鉄道の快速列車増便が良策だ。新幹線に遠慮せず、高速列車を走らせよう。それが地域とともに生きる鉄道のあり方ではないか。
あいの風とやま鉄道に期待
北陸新幹線の並行在来線を運営する4社、IRいしかわ鉄道、あいの風とやま鉄道、えちごトキめき鉄道、しなの鉄道(北しなの線)は、10月27日に国土交通省に対して上限運賃を認可申請した。この一連の報道であいの風とやま鉄道の記者会見が興味深かった。列車の運行について言及し、金沢〜富山〜泊間の快速列車を、当初予定の1往復から3往復に増やすという。新幹線と並行する区間の速達列車を増やすというのは、地元の人々にとって良い方策だ。
あいの風とやま鉄道は、この増便で当初の予算からさらに2億円の赤字が出るという。しかし私はその赤字を上回るメリットがあると思う。北陸新幹線は金沢までだし、大阪方面からの特急も金沢止まりで富山へ乗り入れない。となると、大阪方面から富山へ行く客は金沢で新幹線または並行在来線に乗り換える。富山行きの速達列車があれば、並行在来線を選ぶ客も多いと思う。3往復といわず、毎時1本くらいあってもいい。思い切って、大手私鉄から中古の特急車両を買って走らせてみたらどうだろう。新幹線の半額くらいの特急料金を取ってもいい。
IRいしかわ鉄道はこんな話を切り出せない。能登観光面でJR西日本との協調が重要だから遠慮するだろう。えちごトキめき鉄道もJR東日本との乗り入れ列車が重要となっている。しかし、間に挟まれたあいの風とやま鉄道はJRとのしがらみが薄い。だから大胆な提案ができると言えそうだ。並行在来線の成功のために、あいの風とやま鉄道の活躍に期待したい。
JR東海とJR東日本が東京〜熱海間で競争している。関西では、大阪〜京都〜米原間でJR西日本が新快速を頻繁に走らせる。JR東海の新幹線に対抗するかのようだ。小倉〜博多間ではJR九州が在来線特急を運行し、JR西日本の山陽新幹線と競っている。JR同士も競争しているというのに、並行在来線の第3セクターが遠慮する理由はまったくないのだ。
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