フリーランスが抱える不安とは? お金にまつわるセーフティーネットを考える:ライフネット岩瀬大輔氏 × クラウドワークス吉田浩一郎氏(3/4 ページ)
正規雇用者と違い、安定した収入も、企業からの保護もないフリーランス。21世紀の新しい働き方をしている彼らが抱える不安と、解消したくてもできないその実情についてクラウドワークスCEO・吉田氏とライフネット生命保険COO・岩瀬氏が語り合った。
問われるマネーのリテラシー
吉田: 正社員なら、働けなくなってしまった時期でも6割ももらえるということですか?
岩瀬: そうですね。
吉田: そう考えると、改めて正社員って手厚く保障されているんですね。
岩瀬: そうなんですよ。
吉田: ということは、自営業やフリーランサーは、自分でそのようなところを手当していかないといけない、ということなんですね。
岩瀬: そういうことになりますね。なので、8割の人が「傷病手当金のような保障が欲しい」と回答しています。先ほどの話のように、クラウドワークスのプラットフォームで、これに近いものを提供できれば、登録しているフリーランスの人のニーズにこたえるものだと思います。
吉田: ちょっと思ったんですけど、正社員を辞めてフリーランスになったときに、それまであたりまえだと思っていた傷病手当金のようなものがなくなるという情報を案内してほしいですよね。「手当がなくなりますから、自分で考えてくださいね」みたいな。
岩瀬: そうなんですよね。例えば、正社員だった人はそれまで健康保険料は会社と折半して払っていましたし、給料天引きだったので、どれくらいかかっていたのか知らない人が多いわけです。でも、いざ会社を辞めて、フリーランスになってみると、支払う金額に驚く人がいます。「こんなに多く払っていたのか」と。
吉田: そうそう、自分で払うとびっくりしますよね。
岩瀬: お金に関するリテラシーって、教えてもらわないと身につかないですよね。誰かが教えてくれないと。吉田さんがおっしゃっていた「教える」ということですが、世の中では「スキルを上げるための教育」が一般的ですよね。でもそればかりではなく、自分の身を守るための「お金に関するリテラシーを上げるための教育」が絶対必要だと思っているんです。企業内にいれば、お金のことを心配しなくても、毎月給料を支払ってくれるし、必要なものは自動的に天引きしてくれます。住宅手当もあったり、それに後から退職金がもらえたりもします。そして、組織で働いていれば、会社の先輩からお金のやりくり、生きていくための知恵について教えてもらうこともあるでしょう。大企業にずっと勤めていれば得られる知識や保障による安心感が、ベンチャー企業で働いていたり、転職を繰り返しいたり、特にフリーランスとして働いている人には「ない」のではないでしょうか。そして、それを補完する担い手もいないような気がします。すごく大事なのに、教えてくれる人がいないんです。
吉田: そうですね。20世紀型の働き方は、新卒――つまり学生というあまりお金について考えない立場の状態から企業に入社するわけですから、お金について分からないまま社会人をやっているということですよね。
岩瀬: 本当に生きていくためのスキルを誰が教えるのか、どこで教えるのか考えないといけませんよね。
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