フリーランスが抱える不安とは? お金にまつわるセーフティーネットを考える:ライフネット岩瀬大輔氏 × クラウドワークス吉田浩一郎氏(4/4 ページ)
正規雇用者と違い、安定した収入も、企業からの保護もないフリーランス。21世紀の新しい働き方をしている彼らが抱える不安と、解消したくてもできないその実情についてクラウドワークスCEO・吉田氏とライフネット生命保険COO・岩瀬氏が語り合った。
自分の不安は自助努力で解消――だが問題点も
岩瀬: 保障という部分で、フリーランス245人と正社員210人の生命保険加入率を調べたグラフがこれです。
そんなに大きく変わりがないように思えますが、正社員は先ほど話したように会社で保障してもらっている上でのこの加入率。対してフリーランサーは何の保障もない状態ですから、もっと加入率が高くないといけないのかもしれませんね。実際の必要性から考えると、51.0%だからといって決して高いわけではない、といえそうです。
もちろん低いわけでもないので、多くの人は「自分の身は自分で守る」ということを考えていらっしゃるのかもしれませんね。
入っていない人に「なぜ加入していないのですか」と尋ねると、やはり「お金に余裕がない」というのが正社員より2割程度高いですよね。
吉田: それに加えてこのグラフを見ると、正社員は既に保障されているので「必要性を感じないから」が多いですね。
岩瀬: そうですね。もっと手頃な保険があれば、必要を感じた8割のフリーランサーでも払えるようになるのではないかな、という調査結果になりました。
実際、正社員に比べるとフリーランスは何かあった場合、自助努力で補う範囲が大きくなります。
正社員なら、国の制度、企業の制度、自助努力という3つのブロックがあります。もちろん、フリーランスにも国の制度がありますが、正社員に比べると若干保障が薄い。そうなると自分でできることをしておかないと、いざ仕事ができなくなってしまったような状態のときに立ち行かなくなってしまうという状況が訪れます。
また、正社員であれば死亡した場合、残された家族には国からの遺族年金100万円に加え、企業年金が49万円、毎年付与されます。しかし、フリーランスだった場合、国からの100万円だけです。少ない分の保障をどうするのかというと、やはり自助努力しかなくなるわけです。
これまでの生命保険は高いものでした。高いものでなければ、販売した営業スタッフへの実入りも少なかったからです。でも、インターネットで保険を販売できるようになったおかげでそういったコストをかけずに、純保障分だけを考えた保険商品を作れるようになりました。フリーで働くということは、企業勤めと違い自分の身は自分で守ることが必要になってきます。長期間にわたって働けなくなってしまったときのことを考えて、より多くの皆さんに自助努力をしていただければと思います。
吉田: そうですね。そして、今までは保障の部分も収入の部分も「フリーランスのほうが正社員より格下」と見られてしまう風潮がありました。でも、これからは何かがあった場合でも保障されているし、普段の仕事でもより多くの収入を得られるようにして成功事例を多く作っていくことで、フリーランスという働き方がスタンダードになるようにしていきたいですね。
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