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乗り物文化の重鎮を追悼 種村直樹さん、徳大寺有恒さん:杉山淳一の時事日想(6/6 ページ)
2014年11月6日、レイルウェイ・ライターの種村直樹さんが亡くなった。78歳だった。その翌日の11月7日、自動車評論家の徳大寺有恒さんが亡くなった。74歳だった。鉄道と自動車、それぞれを愛し啓蒙した重鎮が相次いで去った。鉄道ファン、自動車ファンの多くが喪失感を抱いた。その思いを、感謝、そして新たな希望へ昇華させたい。
「種」と「徳」、今度は伝える側に
鉄道趣味分野では種村さんだけではなく、鉄道写真家の故人・真島満秀氏もお弟子さんを抱えていた。こうして次の世代にじっくり教えていくという仕組みも、現在は変わりつつあるだろう。ネットでコミュニケーションができるようになったから、同じ部屋で同じ釜の飯を食うというような「伝授」の様式は終わっていくかもしれない。
ライター稼業は、いやほかの職業も、ただ先達を継承するだけでは成り立たない。時代に即した対応は必要だし、創意工夫によって進化しなくてはいけない。だから2代目種村直樹、2代目徳大寺有恒は現れないと思う。そこで進化が止まってしまう。私たちは先達から受けた教えを理解し、新たな見知を加えて、次の世代に託す。そうしなければ、先達が築き上げた文化は広がらず、むしろ終わってしまうからだ。ITによって情報量が増えた今、複数の先達の良いところを受け継いで、独自の文化を担っていく時代かもしれない。
種村さんは41歳で鉄道旅行術を、徳大寺さんは37歳で間違いだらけのクルマ選びを世に送り出した。その年齢をとっくに超えた今、あまり成長できていない自分が情けない。私なりの「種」や「徳」の残し方を真剣に考えたい。
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