なぜLINEの「既読スルー」にイラッとするのか コンセンサスなき紛争:烏賀陽弘道の時事日想(3/5 ページ)
LINE、Twitter、FacebookといったSNSの利用をめぐってトラブルが相次いでいる。PCやスマホなどから気軽に自分の言葉を発信できるのが大きな魅力なのに、なぜトラブルが起きてしまうのか。
「コンセンサスなき紛争」が勃発
例えば、Twitterのリツイート(RT)。他から回ってきたツイートを、自分の読者にも回覧することだ。このRTを「回ってきたツイートの内容に賛成しているからRTしたのだ」と一部のユーザーは理解し始めた。が、私はそんなふうに思ったことがない。全然賛成できない、まったくバカバカしい内容や誤認のツイートを「こんなひどい話があるんだけど、見てほしい」という意味でRTすることもよくあった。「RT=賛成だと思っている」派が私に送ってきたツイートやメッセージを見てびっくりした。
「PのツイートをRTしているということは、お前はPに賛同しているのだ」と決めつけているのだ。ひどいのになると「Pの一派」「派閥」「信者」「仲間」とか、会ったこともないどころか、正反対の意見の持ち主と一緒くたにされている。
福島第一原発事故が起きてからは、何でも「原発推進」か「原発反対」かのどちらかでしか見ない乱暴な色分けがひどく、どちらのツイートをRTしても反対側から誤解の石が飛んでくる(私は原発否定派でも賛成派でもない)。最初は丁寧に「違いますよ」と返していたのだが、そういう連中が次から次へと出てくるので、あきらめた。そして「Twitterでは、RTが賛意を表すのかどうかコンセンサスがない」という前提で動くことにした。
こうした「了解事項の不在」に早々と手を打ったのは、言動に責任を取るのが嫌いな全国紙である。例えば『朝日新聞』の記者の個人Twitterには、プロフィールに「RTは賛意を表すとは限りません」と「免責事項」がうたってある。
何がしかの形で合意ができても、それが法律のように全体に行き渡ることはないだろう。また、Twitterに新しいユーザーが流れこむ限り、そのユーザーはまた学習しなくてはいけない。その間も、また別のグループが別の了解事項を勝手に作る。そうこうするうちに、いつまで経っても全体を貫く了解や合意はできない。さらに厄介なのは、SNSは次から次へと新しいサービスが登場するので、そのたびにまた新しい「コンセンサスなき紛争」が勃発することだ。
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