「ネット世論」を分析しても、選挙の結果は“逆”になる理由:烏賀陽弘道の時事日想(3/5 ページ)
衆議院選挙の投票があり、与党(自民党・公明党)の大勝という結果に終わった。大方の予想どおりとも言えるが、筆者の烏賀陽氏はネット上に飛び交う意見を見ていて、あることに気づいたという。それは……。
有権者数だけで2.95倍の開き
論より証拠。まずは単純な数字をお見せしよう。そもそも、ネットはどの年齢層に普及しているのか。総務省の統計(2011年末)から引用する。
20−29歳 97.9%
30−39歳 95.8%
40−49歳 94.9%
50−59歳 86.1%
60−64歳 73.9%
65−69歳 60.9%
70−79歳 42.6%
大方の予想通り、20〜49歳で普及率はほぼ飽和している。が、60歳を過ぎるとがくんと下がる。ネットは「20〜50歳代のマスメディア」と考えられる。非老人のメディアと呼ぼう。
一方、投票率となると、この年齢との相関関係が反転してしまう。やはり総務省の統計から(2012年衆議院選挙、PDF)。
20−29歳 37.89%
30−39歳 50.10%
40−49歳 59.38%
50−59歳 68.02%
60−69歳 74.93%
70歳以上 63.30%
投票では、60歳以上の4分の3が投票に行くのに、20−29歳は60%強が行かない。20歳代と比べると、60歳代は約2倍投票に行く率が高い、ということになる。
これだけでも大差なのだが、さらに選挙では大差が開く。日本は「若者が少なくなり、高齢者が多い」という「少子高齢化」の人口ピラミッド構造を持っているからだ。話を単純化するために、例として公益法人「明るい選挙推進協会」が全国の186選挙区(2012年衆議院選挙。総有権者数41万3368人)を抽出した調査を使おう。最も投票率が高い60歳代と、最も低い20歳代を比較してみると、有権者数だけですでに2.95倍の開きがある(ちなみに、選挙区の有権者数による一票の格差では2.3倍で最高裁が違憲判決を出している)。
20−29歳 2万4881人
60−69歳 7万3329人
これに投票率をかけてみる。つまり「実際に投票に行った人数」である。約5倍と、さらに差が開く。
20−29歳 1万1024人
60−69歳 5万4949人
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