「ネット世論」を分析しても、選挙の結果は“逆”になる理由:烏賀陽弘道の時事日想(4/5 ページ)
衆議院選挙の投票があり、与党(自民党・公明党)の大勝という結果に終わった。大方の予想どおりとも言えるが、筆者の烏賀陽氏はネット上に飛び交う意見を見ていて、あることに気づいたという。それは……。
選挙は老人のマスメディア
つまり、まとめていうと「老人は選挙は行くが、ネットはやらない」「非老人はネットはやるが、選挙は行かない」とうことになる。さらにもっと単純化していうと「老人はネットではなく選挙で政治意志を表明する」「非老人は選挙ではなくネットで政治意志を表明する」ということになるだろうか。
すなわち選挙とは「投票所に足を運び、紙に鉛筆で候補者名を書き、投票箱に入れる」という究極のアナログ作業で意思を伝えるマスメディアだといえるのではないか。言うなら「選挙は老人のマスメディア」である。
こうして精査すると「ネットを使う人たち」と「投票に行く人たち」はまったく別のグループと考えたほうが賢明だという結論になる。少なくとも、選挙に行く人たちの大半は、ネットの外にいると考えるべきだろう。これも乱暴な数字だが、比較のために先ほどの「明るい選挙推進協会」の数字を使って比較すると、有権者数の比率は
20〜59歳:60歳以上=3:2=24万9313人:16万4055人
である。「ネットを使う人が少数派である年齢層」のほうが有権者の40%を占めている、というのが現実なのだ。
蛇足だが、政治家からすれば「投票に行かない若者の利益になる政策を実行するより、投票に行く老人の利益になる政策を実行したほうが集票上は能率がよい」ということになる。先ほどの協会の数字でいえば、若者のために「20歳代の賃金を1万円アップします」という政策を作って20歳代の有権者の得票を全部得たとしても、1万1024票にしかならない。
一方、老人のために「年金を1万円アップします」という政策を作って60歳代全員の票を得ると5万4949票が稼げる。つまり5倍効率がよい。裏返していうと、選挙にかける資源(金銭や時間、労力など)や候補者の人的資質がまったく同じであると仮定するなら、老人の利益になる公約を掲げると、若者の利益になる公約を掲げるより、5倍当選しやすいということになる。「投票に行かない若者にウケる政策を掲げても、票にならない」という政治家の話は実際に聞いたことがあるので、あながち当て推量でもない。
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