原料のカカオに何が起きているのか チョコレートが消滅する日:人に話したくなるコラム(3/4 ページ)
近い将来、チョコレートが消滅するかもしれない――。こんなことを言われても「スーパーやコンビニに行けば、たくさんの商品が並んでいるよ」と思われる人も多いはず。しかし、チョコレートの原料・カカオの生産量が不足しているのだ。
注目されている改良品種
カカオには、4つの品種がある。一番メジャーなのは、「Forastero(フォラステロ)」という品種で、世界で流通しているカカオの80%以上を占める。普段口にしているチョコレートのほとんどが、この品種を使用したものだろう。
フォラステロ種が「外来の」という意味を持ち南米を指すのに対して、「純血」という意味を持つのが、最高品質とされる「Criollo(クリオロ)」という品種だ。古くはマヤ文明時代から存在し、中米を中心に栽培されていた由緒ある品種だ。病気に弱くかなり繊細な品種であるうえに収穫量も少ないので、全世界で2%ほどしか生産されていない。だが、その味と香りは他と比較にならないとも言われている。
次に、ハリケーンや病害などでカカオが壊滅したトリニダード島にフォラステロ種を移植して、残っていたクリオロ種と交配して出来たといわれる品種、「Trinitario(トリニタリオ)」がある。この品種は、全世界で10〜15%ほど流通している。
最後に、エクアドルだけで栽培されている品種、「Nacional(ナシオナル)」がある。エクアドルのアマゾン地帯が原産と言われており、芳醇なカカオのフレーバーに加えてフローラルでスパイシーなのが特徴になっている。
これらのカカオをもとに、品種改良の研究が進められている。中でも有名なのが、エクアドルで開発された「CCN51」。エクアドル在来種であるナシオナル種を品種改良したもので、病気に強いのに加え、従来品種の7倍のカカオ豆を収穫できるのが利点だ。残念なことにフレーバーや香りが少し劣ってしまうので、専門家の評価は厳しい。
しかしいま、ホープとして注目されている改良品種がある。中米にある研究機関(CATIE)で開発された「CATIE R-1」と「CATIE R-4」、そして「CATIE R-6」だ。このうち、「R-4」と「R-6」は、2009年に世界最大級のチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」で、その質の高いフレーバーが評価されてインターナショナル・カカオ・アワードを受賞している。カカオのクオリティは、フレーバーが70〜80%を占めていると言われるため、これは大きな成果だといえる。
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