「ワシは自分の顔をラベルに使うほど厚かましくないぞ」:マッサンの遺言(2/2 ページ)
ニッカウヰスキーが独自のブレンデッドウイスキーをつくりはじめた「原点」ともいえる『ブラックニッカ』。現在も黒い瓶だが、バーなどのボトル棚でも目立つ存在であることに変わりはない。
「わしは自分の顔をラベルに使うほど厚かましくないぞ」
1級ウイスキーで1000円ちょうどという価格も受けた。それまで特級のウイスキーでしか出せなかった深みを、グレーンウイスキーをブレンドすることで1級のウイスキーにも加えることができた。「特級をも凌(しの)ぐ」という広告コピーと1000円という価格は、1000円ウイスキー戦争を巻き起こした。時は高度経済成長期。『ブラックニッカ(1級)』は、1000人は収容できるマンモスバーでも人気を集め爆発的に売れた。
ところで『ブラックニッカ(1級)』といえば、W・P・ローリーのラベルで知られる。W・P・ローリーは、エジンバラの酒商、アンドリュー・アッシャーが1853年にグレーンウイスキーとシングルモルトウイスキーを混ぜ合わせたブレンデッドウイスキーの製造を始めた頃に実在したとある文献に書かれている。
政孝親父はよく「このラベルに描かれている髭の男は、あなたがモデルですか?」とたずねられていた。すると「わしは自分の顔をラベルに使うほど厚かましくないぞ。それに髭の男は目が青いじゃないか。わしの目のどこが青いんじゃ?」と冗談めかして笑いながら答えていた。
ウイスキーは透明瓶が多いが、『ブラックニッカ』は文字通り黒。このボトルにも賛否両論が飛び交った。「(黒いため)中味が見えないので、ボトル棚に並べたとき(量の多い少ないが見えないから)きれいである」という意見もあれば「中味が見えないので、どのくらい飲んだか分からない」というものもあり、実に興味深かった。ニッカウヰスキーが独自のブレンデッドウイスキーをつくりはじめた「原点」ともいえる思い出深い商品である『ブラックニッカ(スペシャル)』は現在も黒い瓶。バーなどのボトル棚にあると、目立つ存在であることに変わりはない。
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