新たなゴールドラッシュ到来!? MVNOはバラ色の夢を見るか:神尾寿の時事日想(2/3 ページ)
2014年は「MVNO」の話題で持ちきりだった。特にこれまでとは違って、いわゆる「格安スマホ」が注目を集めるきっかけとなった。果たして今後MVNOはバラ色の世界が待っているのだろうか?
低価格需要に対応しにくい大手の隙を突く
翻って市場全体を見ると、従来型の携帯電話からスマートフォンへの移行特需は一巡した。スマートフォンの先進性や多用途性を評価し、これまでよりも月々の料金が高くなってもスマートフォンが欲しいというユーザー層は、おおむね移行してしまった。残されているのは、コスト意識が厳しく、スマートフォンに興味・関心があったとしても、月々の料金負担が増えることを強く嫌う層である。
また、ブームに乗ってスマートフォン移行をしたユーザーの一部も、スマートフォンで使用するアプリ/サービスが定着したり、Wi-Fi活用で通信量を抑える工夫をしたりなどして、通信・通話をあまり利用しないから、もっと月々の利用料を安くしたいという節約志向が広がっている。
しかし、スマートフォンの低価格需要への対応は、大手の通信事業者が最も苦慮しているところだ。大手キャリア各社は、スマートフォン普及でユーザー一人一人のARPU(Average Revenue Per User:月間電気通信事業収入)が底上げされることを前提にした経営計画を敷いており、スマートフォン移行でARPUが上がらない、もしくは低価格競争でARPUが下がってしまうというのは悪夢のシナリオだ。
また、大手キャリアが扱うスマートフォンは、とかくコストがつきまとう。とりわけ大きいのが、販促費とサポートにまつわるコストだ。これらはスマートフォンになって携帯電話時代よりも負担が増えている。事業の土台となるコスト構造がまったく異なるので、低価格需要があるからといってMVNOと同じパッケージを大手が作れるかというと、それは難しいのである。
関連記事
- スマホバブルがはじけた3つの理由
iPhoneシリーズを中心に昨年度まで活況を呈していたスマートフォン市場が、ここにきて急にトーンダウンしている。出荷台数は減少し、端末販売全体に占める比率も低下。その原因とは……? - “敬老の日”シニアケータイ商戦、格安スマホか大手キャリアか
敬老の日は、シニア向けスマホを親に贈る機会が増えるちょっとした商戦期だ。実績があるのは大手通信事業者の“らくらく”なシリーズだが、最近は“格安スマホ”にする選択肢もあるようだ。 - シニア世代の不満を解消 イオンが格安スマホを販売する理由
楽天も参入してますます過熱する格安スマホサービス市場。その先駆けとして格安スマホの販売を始めたイオングループが目指すものとは――。 - 神尾寿の時事日想:絶好調はいつまで続く? 「iPhoneひとり勝ち」な日本のスマホ市場
iPhoneの快進撃が止まらない。グローバルではスマホの8割以上をAndroidが占める中、日本市場では5割以上がiPhoneという状態が続いている。この流れは続くのか、それとも……。 - 神尾寿の時事日想・バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.