新たなゴールドラッシュ到来!? MVNOはバラ色の夢を見るか:神尾寿の時事日想(3/3 ページ)
2014年は「MVNO」の話題で持ちきりだった。特にこれまでとは違って、いわゆる「格安スマホ」が注目を集めるきっかけとなった。果たして今後MVNOはバラ色の世界が待っているのだろうか?
日本でもターゲットを特定したMVNOが来る?
それでは、今あるMVNO各社に“バラ色の未来”が広がっているかというと、そうとも言い切れない。なぜなら現状のMVNOは事業構造やビジネスモデル、ターゲット市場が似たり寄ったりで、既に過当競争に入り始めているからだ。MVNOの場合は、インフラ投資や技術面で差別化することもできず、仕入れを行う大手キャリアの回線設備もほぼNTTドコモに集中しているため、「どこまでコストを抑えて、低価格なサービスを作れるか」という単調な競争になる。あっという間に市場競争の激しいレッドオーシャンになってしまうのである。
しかし、MVNOという事業形態そのものには、まだまだ可能性がある。とりわけ将来性がありそうなのが、大手キャリアと同じような万人向けの通信サービスではなく、特定ターゲット層向けの市場においてだ。
例えば、海外の事例を見ると、「Boost Mobile」(米国)や「Congstar」(ドイツ)など、若年層向けMVNOが一定の成功を収めている。これらは大手キャリアの子会社MVNOとして、若者向けのサブブランドとなっており、10〜20代に特化した大胆なブランドイメージの構築と低価格な料金体系で支持されている。海外ではほかにも人種特化型MVNOなどが存在している。
こういったターゲット特化型MVNOを日本で考えてみると、若年層向けに加えて、シニア向けにも大いに可能性がある。また今後で考えれば、観光客やビジネスで一定期間日本に滞在する外国人向けの特化型MVNOが登場してもおかしくはない。
MVNOの本来的な存在意義は、大手キャリアではきめ細かな商品開発・提供ができない領域に対して、“かゆいところに手が届くサービス”を効率良く提供し、市場の裾野を拡大するというところにある。MVNOが単なる低価格競争の手段、スマートフォン向け通信市場の規模縮小原因になってしまったら本末転倒なのである。
2015年、MVNOが新たなゴールドラッシュのきっかけになることを期待したい。
関連記事
- スマホバブルがはじけた3つの理由
iPhoneシリーズを中心に昨年度まで活況を呈していたスマートフォン市場が、ここにきて急にトーンダウンしている。出荷台数は減少し、端末販売全体に占める比率も低下。その原因とは……? - “敬老の日”シニアケータイ商戦、格安スマホか大手キャリアか
敬老の日は、シニア向けスマホを親に贈る機会が増えるちょっとした商戦期だ。実績があるのは大手通信事業者の“らくらく”なシリーズだが、最近は“格安スマホ”にする選択肢もあるようだ。 - シニア世代の不満を解消 イオンが格安スマホを販売する理由
楽天も参入してますます過熱する格安スマホサービス市場。その先駆けとして格安スマホの販売を始めたイオングループが目指すものとは――。 - 神尾寿の時事日想:絶好調はいつまで続く? 「iPhoneひとり勝ち」な日本のスマホ市場
iPhoneの快進撃が止まらない。グローバルではスマホの8割以上をAndroidが占める中、日本市場では5割以上がiPhoneという状態が続いている。この流れは続くのか、それとも……。 - 神尾寿の時事日想・バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.