「寝台特急北斗星を残して」と第3セクターの叫び 気持ちは分かるが“筋違い”:杉山淳一の時事日想(4/4 ページ)
2015年1月13日、北海道、青森県、岩手県の第3セクター鉄道担当者がJR北海道本社を訪れ、寝台特急「北斗星」「カシオペア」の運行継続を要望した。理由は道県内や沿線の利用客の不便ではなく、JRからの運行収入が減っては困るからだ。経営危機に瀕した行動だと理解できるが同情できない。むしろ並行在来線問題の本質的解決のために行動すべきだ。
回り道せず、ストレートに窮状を訴えよう
一方で、もうすぐ北陸新幹線が開業し、ドル箱の在来線特急「はくたか」を失う第3セクターの北越急行は、開業以来“その日”に備えて利益を蓄え、100億円以上も確保している。それだけではなく、北陸新幹線開業後は「超快速スノーラビット」を運行して、所要時間と運賃で新幹線と競争する意思を見せている。
青い森鉄道やIGRいわて銀河鉄道も、発足したときから、いずれ北斗星は消える運命だった。それにもかかわらず、北斗星の乗客を増やす努力も、車両更新に協力して魅力を上げる努力もしなかった。また、寝台列車通行の代替案として新たな収益を見出す努力はあっただろうか。JRからの線路使用料は通常会計に組み入れず、ストックしておけばよかったではないか。……と、後から言うのはフェアではないけれども。
ただし、減収は確実、存続の危機も迫る。別の形で国やJRの支援を受けるなら、無策のままで良いわけがない。知恵を使わない会社への支援はムダだ。国の支援の源は国民の税金であり、JRの支援を受けるなら、その負担の源は他の路線の運賃、つまり、JRの利用者が支払うことになる。
いずれにしても、寝台特急は消える。青森県、岩手県、北海道は、この現実に向き合って、今後の収支を考え直さなくてはいけない。どうしても経営が成り立たないなら、国に並行在来線のあり方そのものを考え直すよう要請したほうがいい。火の車のJR北海道に支援を求めるより、国の交通政策に働きかけるべきだ。「寝台特急が欲しい」なんて回りくどいことは言わずに「お金が欲しい」と素直に言わないと、並行在来線問題の本質は伝わらない。
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