実は企業の寿命を縮める劇薬? 本当は恐い「テレビで紹介されました」:窪田順生の時事日想(2/4 ページ)
「テレビで紹介されるのにはどうしたらいいですか」――。メディアの仕事に携わっている筆者の窪田さんのところに、こうした相談が多いという。テレビウケするポイントを伝えることもあるが、相手によってはお茶を濁すことも。その理由は……。
テレビの影響力はスゴい
取材現場に身を置いていると、そういう企業やら個人事業主にたくさんお目にかかる。
今から十年以上前、ある業界で小規模ながらかなり独特なサービスを提供している会社を見つけた。会社といっても、社長がひとり、従業員が数人みたいな超零細企業である。
飛び込みで取材を申し込んで週刊誌などで彼らのことを取り上げた。業界内でもあまり知られた存在ではなかったということもあり反響は大きく、他の媒体でもポロポロ露出が始まり、やがてテレビの情報番組なんかでも取り上げられるようになった。
言わずもがな、テレビの宣伝効果は抜群だ。きっと仕事が殺到して大忙しになったのではないか。そんなことを考えて久しぶりに社長のもとを訪れたら、私の顔を見るなりに明らかに不機嫌そうな顔をして、耳を疑うようなことを言ってきた。
「ああ、あんたか。あんたたちが取り上げてくれたおかげで散々だよ」
聞けば、メディアで露出をするようになってから、彼らと同様のサービスを提供するような同業者がワッと増えたのだという。要は、テレビを見て「ウチでもできそうだ」とパクる輩が続出したのである。それだけではない。なかには、彼らよりも大規模の会社もいて、より手厚いサービスをより低価格で提供して完全に商売あがったりだというのだ。
誰にでもパクられるような商売をしているほうが悪いという意見もあるかもしれないが、個人的には「テレビ」というものの恐ろしさを改めて思い知った気がした。テレビは影響力がすさまじい。それが必ずしも良い方向にだけ出るとは限らない。いや、むしろ経営基盤がしっかりと確立されていない場合はマイナスのほうが大きいのだ。
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