実は企業の寿命を縮める劇薬? 本当は恐い「テレビで紹介されました」:窪田順生の時事日想(3/4 ページ)
「テレビで紹介されるのにはどうしたらいいですか」――。メディアの仕事に携わっている筆者の窪田さんのところに、こうした相談が多いという。テレビウケするポイントを伝えることもあるが、相手によってはお茶を濁すことも。その理由は……。
テレビに露出=マイナス面もある
成功している経営者の多くは、「テレビに露出=マイナス面もある」ことをよく知っている。例えば、ガトーフェスタ ハラダという企業がある。言わずと知れた「ラスク」の超人気店で、全国の百貨店などは行列ができている。この企業がまだ群馬の小さな洋菓子店の時代からラスクを育ててきた、原田節子専務取締役が日本通信販売協会(JADMA)の広報誌に、このように語っている。少し長いが引用しよう。
――急に人気が出たというのは、メディア等で紹介されたなどのきっかけがあったからでしょうか。
原田 メディア経由ではなく私どもは確実にクチコミだけで広まっていったのです。というより、最初はメディアからまったく相手にされませんでした。ある百貨店の催事に出た時、隣のブースにテレビで紹介された店があって、すごい行列ができていたことがありました。その行列でうちのブースが隠れてしまうなど悔しい思いもして、正直うちもメディアで紹介されたらどんなに楽かなとうらやましく感じたこともあります。でも、今となっては逆にメディアに取り上げられなかったことが良かったと思っていますよ。
――それはどういうことでしょうか?
原田 テレビなどで紹介されて急に売れるようになると、生産設備も整わないままとにかく急ピッチで増産しなければいけないじゃないですか。あれは絶対に後でしわ寄せがくる。急いで設備投資をした途端"ブーム"が去って、結局、借金と遊んでいる設備しか残らないという話もよく聞きます。でも、私どもは本当にクチコミだけで伸びていったので一過性の流行ではなく、本当にうちの商品を欲しいというお客様に背中を押していただくような感じで設備投資をした。とにかくお客様の需要に対して満足していただきたい、売り切れですとお断りしたくないという思いが強く、設備投資が恐くなかった。
(JADMAニューズ2014年10月号より)
関連記事
- マクドナルドが異常に叩かれている、もうひとつの理由
マクドナルドがマスコミからボコボコに叩かれている。「SNSの普及によって、異物混入で泣き寝入りしていた消費者の声がマスコミに届くようになったからだ」という声もあるが、筆者の窪田氏は「異物混入のせいだけではない」と見ている。 - NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由
言葉を生業にしているマスコミだが、会社によってビミョーに違いがあることをご存じだろうか。その「裏」には、「華道」や「茶道」と同じく「報道」ならではの作法があるという。 - なぜ日本人はウイスキーを「水割り」で飲むのか?
ドラマ『マッサン』効果でウイスキー市場が盛り上がっている。各社の売り上げが伸びている一方で、気になることも。それは「水割り」。海外の人たちは「ストレート」や「ロック」で飲んでいるのに、なぜ日本人の多くは水割りを好むのか。その理由は……。 - なぜ「ゴキブリ1匹」でペヤングは消えたのか
「ペヤングからゴキブリ出てきた」というクレームを受け、まるか食品が全商品の生産中止に踏み切った。同時期に、日清食品でも同じような騒動あったのにもかかわらず、大きな問題に発展しなかった。なぜまるか食品ばかり叩かれるのだろうか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.