コラム
医学部入試を通して、日本の「医師不足」を考える:日本は本当に医師不足なのか?(1/2 ページ)
国公立大学の医学部入試が行われました。医学部の定員数は未来の医師数を規定します。今回は、医学部入試を通して、昨今叫ばれている日本の「医師不足」について取り上げます。
2月25日、26日、国公立大学の医学部入試が行われました(私立大学医学部は既に入試が始まっています)。
医学部入試の定員数は未来の医師数を規定し、日本における未来の医療のあり方を決める重要な医療政策の1つです。今回は、医学部入試を通して、昨今叫ばれている日本の「医師不足」について取り上げます。
医師不足を考える際、「数」と「分布」を分けて考える必要があります。まず、数を見て見ましょう。
日本の医師は不足しているのか
下のグラフは、OECD(経済協力開発機構)がまとめた国民1000人当たりの医師数を示しています。データは2012年の数値。(以下の図は全て筆者作成)
日本(赤)は、OECD諸国の平均(黄)を下回り、下から6番目となっています。医師数の定義が若干違う国が混じっていますが、その点を考慮しても、国際的に見て日本は人口当たりの医師数が少ないという事実は揺るぎません。「数」が少ないのです。
医学部定員は増員されている
この「数」が少ないことに対して、医学部定員を増員するという対策がとられてきました。医師不足の状況を受け、2008年に医師数の増加が必要という閣議決定がなされ、翌2009年以降の定員数が一気に増えました。
医学部志望者にとっては定員増は良いニュースかと思われますが、この医学部定員増とともに志願者も増加傾向にあり、入学の倍率自体は横ばいの状況です。
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