増収とトラブル解消の一石二鳥、JR東日本「座席未指定券」の狙いは?:杉山淳一の時事日想(1/4 ページ)
上野東京ラインの開業で、今まで上野止まりだった常磐線の特急が品川駅まで乗り入れる。この新しい常磐線特急には自由席がない。その代わりに「座席未指定券」という新しい特急券が販売されるのだ。この仕組みは今後の特急列車の標準となるかもしれない。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
出張や旅行で列車をよく利用する人は、指定席にまつわるトラブルを経験する機会も多いだろう。自分の座席を見つけたら、既に別の人が座っている。「そこ、私の席ですよ」「いいえ、私の席です」。きっぷを見せ合うと、どちらかが席の番号や車両の号車番号を間違えている。日付を間違えた場合はかなりショックだ。トラブルは解消するけれど、間違えたほうも正しいほうも気まずい思いが残る。
昔は同じ列車、同じ座席のきっぷが重複して発売されるようなトラブルが多かったらしい。駅の窓口から指定席台帳のある駅へ、電話で空席を問い合わせてきっぷを作る時代の話だ。係員同士の言い間違い、聞き間違い、台帳の書き間違いなどが原因だ。しかし、現在、JRグループの座席指定券はオンラインで処理されている。発券ミスも重複発売トラブルも激減した。
オンライン化後の重複発売の稀少な例として、窓口のキャンセル処理の入力ミスがある。間違った席をキャンセルし、別の人に同じ席のきっぷを売ってしまう。最初に発券してもらった人は、まさか間違ってキャンセルされているとは知らない。後から買った人も、既に発売されているとは知らない。同じ座席で鉢合わせだ。こうしたミスも現在は解消されたらしい。窓口で観察していると、キャンセルの場合は手入力ではなく、そのきっぷを機械に読み込ませている。この方法ならミスを防げる。
ところが、この春から、再び「自分が確保した席に別の人が座っている」事態が発生するかもしれない。ただし今回はトラブルにならない。座っている人が「じゃ、別のところへ」と素直に移動してくれるはずだから。これがJR東日本の新しい特急券「座席未指定券」の仕組みである。導入される列車は常磐線特急「ひたち」「ときわ」、高崎線特急「スワローあかぎ」、そして「成田エクスプレス」だ。
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