増収とトラブル解消の一石二鳥、JR東日本「座席未指定券」の狙いは?:杉山淳一の時事日想(2/4 ページ)
上野東京ラインの開業で、今まで上野止まりだった常磐線の特急が品川駅まで乗り入れる。この新しい常磐線特急には自由席がない。その代わりに「座席未指定券」という新しい特急券が販売されるのだ。この仕組みは今後の特急列車の標準となるかもしれない。
座席未指定券の仕組み
座席未指定券とは、指定席に座る権利があるけれど、座席を指定しない状態で発売される特急券だ。乗車日と区間のみ指定する。乗車する列車が決まったら、みどりの窓口で座席を決めてもらう。元々指定席の権利はあるから追加料金は不要だ。予定が確定しないなどで、事前に座席を指定しなかった場合は、そのまま乗車して空いている席に座れる。その座席を指定した客が後から乗車してきた場合は明け渡すルールだ。
座席未指定客のために、各座席には座席指定状況を知らせるランプがついている。座席指定済みであれば青、もうすぐ座席指定されている区間に入るときは予告の黄色のランプが点灯する。座席指定のない席は赤である。
座席を指定していない場合は赤いランプの席に座る。それでも落ち着かないだろう。JR東日本広報に確認したところ、「車内では座席の指定は受けられない」という。きっぷの使用開始後は変更できないから、差額を払って従来の車内発行の指定席券に振替するのも不可。座席未指定状態の場合、座席指定を受けた人が来るたびに空席を渡り歩く必要がある。発車10分前だったとしても、窓口で事前に座席指定を受けたほうがいいと思われる。
出張で新幹線を利用する人なら、「新幹線回数券に似ているな」と思うだろう。新幹線回数券にもいろいろあるけれど、東海道新幹線や東北新幹線の回数券は6枚綴りで事前に購入し、使うたびに座席の指定を受ける。座席の指定を受けない場合は、自由席を利用できる。乗車後の指定席利用は保証されないが、空席が多い場合など車掌の判断によって可能になることもある。
確かに使い方は似ているけれど、座席未指定券は新幹線回数券のバラ売りと同じではない。なぜなら座席未指定券の対象となる列車すべては全車指定席で運行されるからだ。元々自由席車両がないのである。
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