仁義なきマットレス戦争を制する次のキーワードは何か:窪田順生の時事日想(2/4 ページ)
マットレス業界の競争が熾烈さを増している。ある会社は「低反発」のメリットをうたえば、別の会社は「高反発」のメリットを強調する。さらに別の会社は……といった感じで、言葉のイメージ争いを繰り広げているだけなのかもしれない。
テンピュールの訴求
では、こんな高反発側の主張を「低反発」の代名詞としてうたわれ、マットレス業界で一時代を築いた感もあるテンピュールはどう受け止めているのか。
公式Webサイトを開いてまずは驚くのは、高反発ウレタン、高反発ファイバーだけではなく、一般的な低反発ウレタンを引き合いにだして、さまざまな角度から寝心地を比較、テンピュールが断トツですよというエビデンスをドーンと掲載していることだ。
要するに、低反発とか高反発とか細かいレベルの議論はせず、ただひたすらに、テンピュール・アズ・ナンバーワンを訴求しようというわけだ。さすが、NASAのエームズ研究所で生まれて、今も米宇宙開発財団の認定を受けているのは伊達じゃないと言わんばかりの自信だ。
ただ、その一方で高反発派の拠り所になっている「寝返り」については以下のようにしっかりとクギを刺すことも忘れない。
高反発マットレスは、その押し返す力で体に負荷をかけ続けるため、押し返す力と直接の接点になっている体を圧迫し、結果、血流を促すために寝返りを頻繁にうつことになるとも考えられます。多すぎる寝返りは質の良い睡眠の妨げとなる場合もあります。(テンピュール公式Webサイトより)
軟らか過ぎず、硬過ぎずのテンピュールがやっぱ一番ですよというキーメッセージにもっていくという戦略なわけだが、実はこれと似たような戦略をとるのがアイリスオーヤマだ。実はこちらも東洋紡とともに開発をした新素材を使った「エアリー」という製品を2012年から出しており、じわじわとシェアを拡大しているのだが、ここもテンピュール同様に低いも高いでもなく「適度な反発力」と「満足度93%」とのみうたっているのだ。
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