空き家になった実家――それは資産? 負債?:マネーの達人(2/2 ページ)
1人暮らしだった母が特別養護老人ホームに入居し、実家は「空き家」となったのだが……。今回は、空き家の現状を紹介します。
空き家の現状
妻はテレビやラジオから得た情報から危機感を持っているが、私は「そんなに焦る必要はないし、所有していることが大変になったら売却すれば良い」と気楽に考えていた。
先日、中学校の同窓会で久しぶりに帰省し、実家の状況も確認して駅前の不動産業者に家賃相場などを聞きに行った。そこで聞いた話は、私の想像をはるかに超える内容だった。
私: この辺で一戸建てを貸すと家賃はいくらくらいですか?
不動産業者: そうですね……、タダでも借り手があればラッキーですね。
私: えーっ?! タダですか?
不動産業者: そうですね。借り手がなくて管理を頼んでいる人がほとんどです。
私: 管理を頼むと月々の費用はいくらですか?
不動産業者: 月々1万円ぐらいが相場です。その他に草むしりを頼んだりする費用は別途かかります。
私: そうなんですね……。売る場合はどうですか?
不動産業者: まぁ、買い手を見つけるのは難しいですが、見つかったとして一戸建てで80万円くらいです。
私: 売るときにはどんな費用が必要になりますか?
不動産業者: 一番お金がかかるのが、家財道具の処分です。このところ相談にくる人は実家を処分する場合が多いので、家財道具を全て処分する見積もりを出していますが、だいたい200万円ほどです。
私: 売った金額では足りないということですね?
不動産業者: 中古で買ってくれれば御の字ですよ。「解体が条件」なんて言われてしまうと、解体費が別に150万円ほど必要になります。古い建物で断熱材に有害物質のアスベストが使われていると、処分費だけでも200万くらいは別途必要です。ただし、これに関しては専門家に見てもらわないと含有量は分かりませんが。
私: 処分するだけでも多くの費用が必要になるとは驚きました。
不動産業者: そうですね。税理士に言わせると「実家の空家は資産じゃなくて負債」なのだそうです。
空き家問題の恐ろしさを実感してから再び妻と話し合い、「相続放棄」という結論に達しました。これからは、空き家の話でケンカすることもなく夫婦仲良く暮らしてゆきたいと考えています。(岩宗繁樹)
著者プロフィール:
岩宗繁樹
一般財団法人 不動産流通支援機構 相続土地活用研究会 代表
1954年11月宮崎県生まれ。都内の大学を卒業。平成24年7月に積水ハウス株式会社を早期退職し、株式会社ライフステージらしくを設立。サラリーマン時代に300棟以上の賃貸住宅やすまいの建築のお手伝いをしてきた経験を生かし、地主の相続事前対策と土地活用のコンサルタント業務をしている。平成6年に日本初となる本格的定期借地権分譲事業、さいたま市(旧大宮市)14区画を担当したことで、業界では定期借地権事業の実務家の第一人者として認識されている。現在、コニカミノルタビジネスソリューション(株)プレゼンツ「ホンキの販促.com」の専門講師をしている。4月からは、埼玉県定期借地借家権推進機構の事務局長に就任予定。
保有資格:不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引主任者/AFP/FP技能士2級
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