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福島第一原発から約6キロ、ある家族の「一時帰宅」に同行した:烏賀陽弘道の時事日想(5/5 ページ)
東日本大震災から4年が経ったが、原発事故で避難生活を続ける人たちはどうしているのだろうか。筆者の烏賀陽氏は、ある家族の「一時帰宅」に同行、そこで目にしたものは……。
福島第一原発から約6キロ
クルマが減速して、西原さんの家に着いた。富岡町の名所、桜並木の傍らだった。
降り立って息を呑んだ。門は伸びきった雑草や庭木に絡め取られ、もう開かない。というより、そこが門だということも分からなかった。最初は生け垣だと思った。
観葉植物だったアイビーが伸びて、玄関の壁を覆い、家を包もうとしている。庭だった場所は茶色い枯れ草が埋め尽くし、足を踏み入れることも難しそうだった。
玄関が開いた。「異常ありませんでした」と書いた紙が落ちた。警察のパトロール連絡だった。日焼けした紙は乾いた海草のようだった。2014年8月の日付が読めた。
福島第一原発から約6キロ。立ち入り禁止区域にある西原さん宅への「訪問」はこうして始まった。
(つづく)
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