進むクルマのIT化と、カー・ハッキングの危機を考える:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)
ドライブするとき、スマホをつないだり、USBメモリを挿して音楽を聴くという人が多いはず。しかしクルマのIT化が進む現代、もしそこからウイルスが侵入してクルマが乗っ取られたとしたらどうなるだろうか。
自動車の未来に立ちはだかるウイルス問題
資金力のある自動車メーカーは、2010年代中にはこうした自動運転のクルマを販売にこぎつけたいと考えているのだが、ここに立ちふさがる可能性があるのがウイルス問題なのだ。
自動運転とは、実は運転支援システムの集合体である。ヒューマンエラーの防止を目的とする運転支援システムは、どうしてもさまざまな外部デバイスからの情報を制御系にフィードバックしなくてはならない。例えば衝突軽減ブレーキは、人が操作しなくてもブレーキをかけるから運転支援デバイス足りうるわけで、この作動はセンサーからアクチュエーターまで必ず電気信号で制御されている。電子的に乗っ取りを行うことは不可能ではないはずだ。しかしながら複数のシステムをまたぎ、異なるOSを越えてハッキングを行うのはかなり難易度が高いのもまた現実だ。
では、リスクはまったくないかと言うと、やはり脆弱な部分もある。自動運転においてドライバーがクルマに目的地を指示する方法は当然カーナビを介した形になるだろうが、冒頭に記したさまざまな端末はそのナビと回路的に隣接したオーディオと接続することになる。これらのインフォテインメントシステムは、これまでクルマの中枢システムから切り離されてきた分、エンジンや車両の制御系と比べてはるかに脆弱だ。
さらに今後の多機能化を推進するために、インフォテインメント系のシステムが組み込みの専用から汎用OSへと変わりつつあるのもセキュリティ的にはマイナスだ。例えばホンダが欧州で「CRV」と「シビック」に搭載したインフォテインメントシステム「ホンダコネクト」は、Android OSがベースになっている(参照リンク)。
ここを狙い撃ちして、例えば行き先指示を乗っ取ったり、車両の現在位置を強制的に誤認識させるようなことは、中枢制御系を乗っ取るよりはるかにやりやすい。それもハッキングであることには変わりない。
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