新天地でも“転校生”ではない、イチローのハイレベルな「EQ」:赤坂8丁目発 スポーツ246(2/4 ページ)
メジャー15年目のシーズンを迎えたイチロー選手は、今季から新チームに合流。新天地なので苦労するのでは? と思いきや、チームメートと楽しそうに会話をしている。“転校生”のような立場なのに、なぜすぐにチームに溶け込むことができたのか。
イチローのEQは高い
イチローの英語力がハイレベルであることは意外に知られていない。イエリッチが「彼との会話に通訳は基本的に必要ない」と言うように、フォーマルな言葉だけでなくジョークを飛ばす際などにも必要なスラングに至るまで場の空気を読みながらキッチリ使い分けられる会話術がイチローには身についている。これは長いメジャー生活において第一線でずっと戦い続けて来ることができた証でもあるだろう。
ワシントン州スポンケーンの名門校ゴンザガ大学でスポーツ心理学を学んだマーリンズのマイク・レドモンド監督によると、こうしたイチローが持つ“場の空気を読む力”を心理学の世界では「ソーシャル・インテリジェンス(社会的知能)」と呼ぶという。その世界においては通称「EQ」とも称される能力らしい。
「ソーシャル・インテリジェンスとは『自身をどのように周囲と“接続”させていくか』を考えて実行する力。まず間違いなくイチローは人並みはずれた高いEQの持ち主だ。普通に考えれば、彼は今季からチームに加わったのだから周囲と溶け込むまでには相応の時間を要するはず。ところが彼はそうではなかった。
スプリングトレーニング(春季キャンプ)開始から2〜3日もしたら、ほとんどの選手とまるで昔からの親友同士のようになっていたよ。分かりやすくいえば、学校の転校生がたった数日でクラスの古株になってしまうようなものだ」と同監督は驚嘆する。
ちなみにイチローがメディア対応の際に通訳を必ず介して話をしているのは、彼の言葉を借りれば「日本人である以上、母国語でない英語で応じると自分の意図していることがうまく伝わらない可能性がある」からだ。
たとえ英語力には自身があっても、自分の発言が不都合な形に曲解されて周囲に誤解を与えたくない。ひいては、それによってチームメートや関係者に迷惑をかけたくない――そういう風に考えて気配りができるところもイチローが高いEQを誇っていることの証明と言っていいのではないだろうか。もし、いわゆる“KYな人間”だったら、きっとここまでは考えられまい。
関連記事
- 2年半の摩天楼生活で、イチローがヤンキースの面々に見せた“流儀”
ヤンキースのイチローが、来季から新天地でプレーすることになりそうだ。現場で一緒に戦ってきた他の選手たちは、彼についてどのような印象を持っているのだろうか。チームメートに取材したところ、意外な言葉が……。 - 年俸21億円を捨てた黒田博樹とは、どんな人物なのか
ニューヨーク・ヤンキースからFAとなっていた黒田博樹投手が今シーズン、古巣の広島カープへ復帰することになった。メジャーリーグからの巨額オファーを蹴った「クロダ」という男は、海の向こうで一体どんな人物として周囲の目に映っていたのか。 - “ハンカチ王子”斎藤佑樹の人気はなぜ凋落したのか
かつて“ハンカチ王子”として脚光を浴びた日本ハム・斎藤佑樹投手の人気が凋落している。成績がパッとしないから仕方がない部分もあるが、なぜKYな言動を繰り返すのか。その裏にあるのは……。 - 過去3年で42%増! 横浜DeNAベイスターズのファンが増えている理由
プロ野球のペナントレースが終了した。3年前に誕生した「横浜DeNAベイスターズ」の成績は6位、5位、5位と低迷しているが、観客動員数は増え続けているという。その理由について、同社の池田純社長に聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.