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東京〜大阪間を3分短縮! 新幹線の高速化に挑み続けるJR東海:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)
2015年3月のJRグループダイヤ改正で、東海道新幹線の最高速度は時速285キロメートルに引き上げられ、東京〜新大阪間の所要時間は3分短縮した。たった3分だけど、この数字には大きな意味があるのだ。
転機となった「のぞみ」
100系の最速時代が4年間続いた後、1992年に東海道新幹線は大転機を迎える。のぞみの誕生だ。300系電車がデビューし、電車だけではなく、線路も改良して最高時速270キロメートルを実現した。航空自由化を見越したJR東海の「戦略的なスピードアップ作戦」だ。所要時間は2時間30分になって、この時代が15年以上も続く。300系のほか、営業最高時速300キロメートルの性能を持つ500系、同285キロメートルの700系が登場した。ただし、これらの列車は東海道新幹線では最高時速270キロメートルのまま。最高性能は山陽新幹線で生かされた。
2007年にN700系が登場。山陽新幹線で時速300キロメートル運転を可能とした。車体傾斜装置などの新技術を投入し、東海道新幹線内も最高時速270キロメートルの運転区間を広げた。その結果、東京〜新大阪間の所要時間を5分短縮した。
そして2015年3月、かねてより投入していたN700系の改良車、N700Aによって営業最高時速285キロメートルの運転を達成した。東海道新幹線のような過密路線では、性能の良い車両を入れても、数が少ないうちはほかの車両の速度に合わせなくてはいけない。スピードを上げても前の列車に追いついてしまうからだ。N700Aの数が揃ったところで速度をアップしたといえる。
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