人も会社も、自分のことは案外分からない
例えば、注文住宅の建築会社の例を紹介しましょう。
その建築会社は自社の強みを理解できていませんでした。激しい競争の中で、なにがアピールポイントかが分からなくなっていたのです。だから「値段が高いと売れない」と思い込んでしまっていました。
その結果、社長は現場の営業マンに対して「合い見積もりで負けないでくれ。値引き競争になる場合はできるだけがんばってくれ!」と言っていたのです。しかし、あるとき、営業マンに指示を出してみることにしたのです。
「過去に、弊社で家を建ててくれた顧客に聞いてみてほしい。ライバル会社ではなく、弊社で建ててくれたのは、なにが良かったからか?」
そうやって営業マンを使いしっかり調査した結果、いくつものアピールポイント(強み)が明らかになってきました。
- 親会社がゼネコンで地元の公共建築物を建てているので、技術力が信頼できた
- 同じ見積もり金額だったが、すばらしい収納の提案をしてくれて気に入った
- 施主の要望を、営業マンだけでなく、初回から設計担当者も同席して2人で理解して、最も希望通りのデザインを提案してくれた
このような理由がいくつも出てきたのです。これらは、チラシや会社案内では1つもアピールしてこなかったことでした。その会社の強みは価格の安さだけでなく、公共工事で鍛えられた技術力や収納の提案力、設計デザインの提案力などだったのです。
つまり、「会社というものは直接お客さんと接しないから、自社商品・サービスの強みを把握しづらい」ということなのです。
だからこそ、営業マンが直接調べてこないといけないのです。こんなことは世の中に驚くほどあふれています。
ある漢方薬局は品ぞろえがアピールポイントだと思い込んでいましたが、実は、社長の親が地元の医者だったためです。二世代続く健康への信頼が集客に役立っていたのです。
ほかにも、日本国内のシェア1位であることをアピールしていなかった建設機器メーカーもありました。
毎月、百貨店で1万個も売れている人気1位の商品であることをアピールしていなかった化粧品メーカーもありました。
テレビ局の顧問コンサルタントをしているのに、それがアピールポイントだと気付いていなかった社会保険労務士さんもいました。
こんな例は、挙げたらキリがありません。営業マンは「強みのアンテナ係」になることで自社のアピールポイントは何かを調査し、それを会社に報告すべきなのです。
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