“若手”の「パルム」が、発売後7年で8倍も売れた理由:水曜インタビュー劇場(アイス公演)(2/7 ページ)
発売してから今年で10年目の「PARM(パルム)」(森永乳業)が、ビッグブランドの中に食い込んでいる。アイスクリーム市場は定番商品が強いのに、なぜ“若手”のパルムは売れているのか。その謎に迫った。
市場に“空白地帯”
土肥: パルムは2005年に発売してから、“わずか”7年目にして売上100億円を超えるビッグブランドに成長されました。なぜ「わずか」という表現をしたかというと、ビッグブランドを見ると定番商品ばかりなんですよね。ここ数年どころか、過去10年を振り返っても、新しいブランドは苦戦している。そうした中で、なぜパルムはヒットしたのか、自己分析していただければ。
孫田: パルムは2005年に発売しましたが、開発したのは2003年から。当時、スーパーではマルチパックが主流になりつつあって、家庭の冷蔵庫の中もマルチパックが占めるようになっていました。マルチパックでどういった商品が売られていたのかというと、ほとんどのモノが「300円」。「家族みんなで食べましょう」「子どもが食べましょう」といった感じで、子ども向けの商品ばかり。
マルチパックの中で大人向けの本格的な商品はありませんでした。また、大人向けのアイスといえば「ハーゲンダッツ」が圧倒的な存在感を示していましたが、価格が高いので日常的に食べることは難しい。であれば、大人が平日にちょっとぜいたくを感じられるような商品を開発することはできないのか。市場に“空白地帯”があったので、そこを埋めるような形で商品開発が始まりました。
土肥: アイス市場に空白地帯があったわけですが、そこに空白があることってアイスクリームの仕事に携わっている人であれば当然認識されていますよね。
孫田: はい。
土肥: ということは競合他社もそこを埋めてこようとしたと思うんですよ。「大人が平日にちょっとしたぜいたくを感じられるプレミアムなアイスがないなあ。ウチで何かつくれないか?」といった感じで。当時、このような動きはあったのでしょうか?
孫田: いえ、なかったと認識しています。ご指摘のとおり、アイスクリームの仕事に携わっている人であれば、空白地帯があることは認識していましたが、そこを埋めるような商品をつくることは簡単ではありません。
ハーゲンダッツのような商品を安くつくるのは、ものすごく難しい。ただ、ハーゲンダッツ並みの味を追求しながらよりリーズナブルな価格であればできるかもしれない。といった感じで開発が進んでいきました。
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