“ブラック企業”問題も影響 ワタミ創業初の営業赤字 最終損失は126億円に:15年3月期決算
主力の国内外食事業を中心に業績不振が続くワタミ。2015年3月期通期の決算は大幅な減益など厳しい結果となった。
居酒屋チェーン「和民」などを展開するワタミは5月13日、2015年3月期通期の決算説明会を開いた。国内外食事業の業績不振が止まらず100店舗を閉鎖するなどしたため、連結の営業損失は20億7200万円、経常損失は34億600万円と、ともに創業以来初の赤字に転落した。
売上高は前期比4.8%減の1553億1000万円、当期純損失は126億6800万円(前年同期は19億1700万円の損失)に上り、2期連続の最終赤字となった。国内外食店舗の減損処理や、ワタミタクショクなど子会社3社を経営統合したことに伴う宅食事業ののれん償却額、固定資産除却など計69億円の特別損失を計上したことで大きく落ち込んだ。
大きく足を引っ張るのが主力の国内外食事業だ。売上高は前期比13.9%減の602億7200万円、営業損失は36億9900万円(前年同期は19億1700万円の損失)と減収減益。不採算店を中心に前期だけで100店舗を撤退、顧客数も伸び悩み、既存店売上高は前年比6.6%減だった。今期も新たに85店舗を撤退する計画で、期末の店舗数は475店舗にまで減少する。ピーク時には売上高が約869億円(2007年度)、店舗数は646店舗(2010年度)だった姿が遠くかすむ。
同社の清水邦晃社長は「長らく顧客のニーズに合った商品開発やサービスができていなかった。“ブラック企業”と揶揄されることも業績に悪影響を及ぼしていると言わざるを得ない」と反省する。当面は屋号を変えるつもりはないが、失墜したワタミブランドの信頼回復に努めていく。
また、顧客ニーズへの対応については、社長就任後に「和民」や「わたみん家」などのメニュー価格を改定したり(関連記事)、店舗オペレーションの効率化を図ったりして客足を取り戻す施策を講じているものの、まだ目に見える成果は表れていないという。
「ワタミという会社全体の業績回復のためには国内外食事業の改善が不可欠。この1点に集中したい」(清水氏)
ただし、ほかの事業に関しても厳しい状況だ。宅食事業は競合他社との競争が激化し、売上高が394億7800万円(前期比7.9%減)、営業利益が19億1100万円(同43.9%減)となった。介護事業は既存施設の入居率が上がらず、売上高が354億400万円(同1.0%増)、営業利益が23億9900万円(同34.0%減)だった。
2016年3月期の連結業績の見通しについては、売上高が1488億円(前期比4.2%減)、営業利益が13億円、経常利益が5億円、当期純利益は10億円を予想する。特に国内外食事業は3年後に居酒屋業界の平均水準である営業利益率3%を目指しており、「今期の黒字化は必須」(清水氏)とした。
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