日本人がビザ取得でハマる、大学の専攻と現在の職種の違い:新連載・日米のビジネス事情の違いを知る(前編)(2/7 ページ)
米国でビジネスに力を入れている日本の起業家は、何を考え、どう動いているのか。米Six ApartのCEO 兼 米Infocom Americaの取締役を務める関信浩氏と機楽株式会社代表取締役兼ロボットデザイナーの石渡昌太氏が語り合った。
石渡: 確かにニューヨークって、意外と「ものづくり」できるスペースがないんですよね。今回SXSW(サウス・バイ・サウス・ウェスト:デジタル・IT関連、音楽、映画の3本柱で構成される大型イベント)用の展示品を作りたくて、3Dプリンターが使えるところを探したんですけれど、びっくりするほど見つかりませんでした。3Dプリンティング関連の「メーカーボット」も「シェイプウェイズ」もニューヨークに本社を構えているので、もう少し期待をしていたのですが……。
本社で、一般ユーザー向けに3Dプリンターが使えるサービスを提供していてもよさそうなのに、これもやっていない。一生懸命探して、ようやくウォールストリート近くのUPS(ユナイテッド・パーセル・サービス:貨物運送会社)の店舗で3Dプリンターが使えることが分かり、訪れたのですが、「え? 君、発注するの?」と店員さんに驚かれてしまって(笑)。実際にはあまり使っている人はいないのかもしれませんね。その点、日本は3DプリンターにしてもDIY系のサービスにしても、少しお金を払えば作業を引き受けてくれる場所がたくさんあるので、ものづくりを生業とする私のような人間にはありがたい国です。
関: 本当にその通りで、調べれば調べるほど、ニューヨークにものづくりできる場所が少ないことに驚いています。これは私に限らず、多くの人が言っていることです。一部の学校には3Dプリンターが導入されていますが、一般ユーザーが使える場所が限られているんです。ニューヨークはとにかく物価が高いので、3Dプリンターを既存店に設置してもコストが見合わないからなのかもしれません。ですから私たちのようなスタートアップがそこを狙いに行くんです。もちろんもう少し状況が変わったら、大企業も参入してくる可能性はありますが。
石渡: 昨日UPSに、3Dプリンターで出力した商品を受け取りに行って来たのですが、隣にいたおじさんとおばさんが、大きく「A」と書かれた看板を持参し、「これを3Dプリンティングしたい」と言っていました。3Dプリンターを利用するには出力したいものをデータで用意しないといけません。しかし、そうした基本事項を理解していない様子でした。その人たちにUPSの店員さんが丁寧に説明していたのですが、もしあのレベルの人たちがユーザーの中心だったら、お客さまに対するサポートコストがかかり、人件費的にはペイしないだろうなあ……と思います。そういう意味では、UPSは挑戦的ですよね。
機楽株式会社代表取締役兼ロボットデザイナーの石渡昌太氏。「かわいい」と「テクノロジー」を組み合わせて、“少し未来”を表現するクリエイター。 プロダクトデザイン、組込み開発、展示製作やそのアートディレクションを行う。造形から縫製、機械設計、回路設計、プログラムまで一貫して1人で開発。 2011年にはnecomimiのプロトタイプ開発に携わる。同年、機楽株式会社を設立。2013年にロボット組立キット「RAPIRO(ラピロ)」をクラウドファンディングサービス「Kickstarter UK」で発表し、1000万円以上を調達。その後、国内のクラウドファンディングサービス「Makuake」でも500万円以上を調達し、ラピロの製品化を実現
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