なぜ今“昭和型”コーヒーチェーンが増えているのか:新連載・消費トレンドから見る企業戦略の読み解き方(5/5 ページ)
コンビニコーヒーなどに押されて苦戦を強いられてきた「喫茶店市場」。しかし、ここ数年でV字回復の兆しを見せているのをご存じだろうか。そのけん引役になっているのは、西海岸風のオシャレな1杯……ではなく、日本の昔ながらの“昭和型”喫茶店だ。
さらに、このフルサービス型喫茶店の提供価値は、滞店時間を気にせずくつろげることだ。つまり、外食ビジネスの重要な指標の一つである「回転率」を無視したビジネスモデルとなっている。そのため、1店舗当たりの客数増大に限界がある。サービスを売りにしているがゆえにコスト削減が難しい中で利益拡大を目指すには、「客単価の引き上げ」と「来店頻度の増加」による売り上げ拡大が求められるだろう。
そこで、この過熱市場における勝ち残りに向けた打ち手をいくつか考えてみたい。
1つ目は、出店戦略の転換による顧客数の拡大である。すでにコメダ珈琲店などが取り組み始めているように、ショッピングモールへの出店強化や、アパレルや雑貨などを販売する小売業と組んだ店舗で集客力を高めれば、新たな顧客を獲得できるだろう。
2つ目は、特定の顧客層のニーズに応じた店舗開発/メニュー展開によるターゲットの拡大である。例えば、ファミリーレストランを利用することが多い“ママ友”やシニアサークルなどの団体客に特化したり、ビジネスシーンに特化することで、他の業態から顧客を引き込めると考えられる。
3つ目は、サービス拡充を通じた顧客1人当たりの来店頻度アップである。例えば、コンビニに見られるような公共サービスの取り扱いや、スターバックスコーヒーとTSUTAYAのコラボ店舗のように本屋を併設することなどで、店舗に対する顧客のロイヤリティを高められるだろう。
そして4つ目は、商品の高付加価値化による客単価の増加である。スーパーマーケットや一部コンビニに見られるインストアベーカリーや、一部ファミリーレストランで見られる店内調理など「できたて」「高品質」が流通・外食のトレンドとなる中、喫茶店でもひと手間加えたメニューを提供することで、1品あたりの客単価アップを狙える。
成長するフルサービス型喫茶店市場においては、「くつろぎ」に続く新しい価値づくりが求められている。それをいち早く見出し、提供することが勝ち残りの鍵となるはずだ。
著者プロフィール
JMR生活総合研究所
市場リサーチや顧客企業への戦略コンサルティングのほか、マーケティング情報サイト「J-marketing.net」を運営。マーケティングや戦略経営に関する豊富な記事を無料会員向けに提供している。
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