GEが「GEキャピタル」を売却、その狙いは:撤退(4/4 ページ)
GEが長年の懸案、「GEキャピタル」の売却を発表した。超巨大企業による主力事業の売却は、日本ではほとんどないので、これがどれほどすごいことなのか、多くの人はなかなかピンとこないかもしれない。
強く賢くたくましい製造業
第二の理由は、昨年に決着がついた、仏重電大手アルストムのエネルギー産業向け事業をめぐる争奪戦での勝利です。独シーメンス・三菱重工業の日独連合との熾烈な争いを制したことで、元々世界トップの航空・運輸・医療向けに加え、電力・ガス向けでも圧倒的な世界トップの座を確定させたのです。要は、「自分たちは世界の製造業の王者だ」という誇りを強めると共に、GEキャピタルの売却によって生じる収益の落ち込みを埋める見込みが立ったのです。
「製造業だとか言いながら金融部門に食わせてもらっているんじゃないか」といった陰口はもう言わさないぞ、と悲願達成へ邁進する気分になったことは間違いないでしょう。ついでながら「業界1位または2位」というスローガンの徹底にも役立ちます。GEキャピタルだけは(大きいとはいえ)全米7位という中途半端な市場地位でしたから。
理由の第三は、同社の掲げるIndustrial Internet戦略の成果が見えてきて自信を深めたことでしょう。これこそ弊社がGEをウォッチしている主たる理由なのですが、今世界が注目するIoT戦略の先駆者として2012年11月に“Industrial Internet” Visionを発表後、新しいビジネスモデルにより顧客への価値提供の次元を上げると同時に、製造業の未来を変える試みを着々と進めています。
例えば航空機分野では、エンジンに備えられたセンサーや通信システムを通してエンジンの稼働状況と調子が刻々とGEおよび顧客の間でシェアされて、不調の前兆が把握され、航空会社における保守点検の優先項目やタイミングが調整判断されるところまで来ています。
この結果、GEがIndustrial Internet戦略を推し進める大型機器の製造業分野では、単なる機器の価格競争や人海戦術のサービス合戦ではなく、顧客のビジネスにとって付加価値をもたらす度合によって機器ベンダーの評価、ひいては将来のビジネス機会が変わってくる方向に変わりつつあります。それを主導しているのがGEなのです。しかもその仕組みを他のメーカーに外販し、新たな収益の柱にする体制まで整っているのです。
つまりイメルト氏がずっと狙ってきた、強く賢くたくましい製造業の代表選手に復帰する見込みが立った今、その足かせにしかならないGEキャピタルを抱えておく理由はもう存在しないということです。これほど明確な「なぜ今か」の答は他にありません。
ちなみに今後、GEが金融サービスを全く手掛けないかというと、そんなことはなさそうです。他の電機大手が実施している程度の、機器を売るためのファイナンス手段(産業向けローン、リースなど)の提供というオーソドックスなB2B金融サービスは今後とも継続されると見られます。(日沖博道)
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