「変わらなきゃ」から20年 日産はどう変わったのか?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)
昔からの日産ファンにとって、近年の同社の状況は何とも物足りないと感じているのではないだろうか。なぜ日産はこのように変わってしまったのか。
一方、北米では現在クルマが順調に売れており、インフィニティもその波にしっかり乗っている。欧州は元々日産が得意にしてきたマーケットで、北米に負けない成長を遂げている。中国だけはまだ予断を許さないが、二桁成長というような無茶を見込まなければ、ポテンシャルそのものはまだまだ高い。しかしながら日本のマーケットは少なくとも日産にとって、先行きの明るさが見えてこないのだ。
こうした状況下にあって、日産にとって一番の頭痛のタネは、販売店をどうやって食わせていくかにあるはずだ。本体はグローバルな成功で成長できるが、販売店網はそうはいかない。現在はデイズの好調で何とか販売店の脱落を食い止めていると言えるだろうが、シェアの40%を軽自動車が占めた状況から見て、軽自動車の優遇税制は今後も段階的に削られていくと考えるのが順当だろう。その時どうするのかが問題だ。
親会社のルノーがルノー各車を日産ディーラーで売ることができればいいが、現在のところルノーブランドで国内で売れるのは「カングー」のみと言う状況だ。補修部品の値段は輸入車全体で見ても驚くほど高い。ルノーの売り上げで国内販売網を維持できるかと言われればあまり期待はできないだろう。
1.2リッター3気筒のHR12DDRエンジンは技術の日産らしい手抜きのないエンジンだが、さすがにエンジンは単体では評価されない。新技術の粋を凝らしたエンジンを引き立てるだけのクルマがあればもっと高い評価が得られるはずだ
日産に明るい話題がないわけではない、ステアリングの電制化(バイワイヤ)では他社に先駆けてユニークなクラッチ付きのリスクヘッジシステムを開発しているし、ノートに採用されている1.2リッター3気筒のHR12DDRエンジンは、世界的に見ても大変先進的な高圧縮ミラーサイクルエンジンだ。他社のものより理論的にはるかに正しく、高性能なエンジンである。技術の日産は決して死んではいない。筆者も一人の日本人として、日産の国内市場での奮闘に期待したい。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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