なぜ日本でデング熱が流行した? 国立感染症研究所・名誉所員の話:迫る脅威(1/3 ページ)
昨夏、デング熱に感染した患者が増え、市民の間で不安が広まった。では、今年はどうか。国立感染症研究所の名誉所員に、まだあまり議論されていない“問題”を聞いた。
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先週(6月8日〜6月14日)、ITmedia ビジネスオンラインで最も読まれた記事は『「日本は世界で人気」なのに、外国人観光客数ランキングが「26位」の理由』、次いで『JRの運転士が「水を飲んだら報告」だった理由』『クレジットカード一括払いに思わぬ落とし穴』でした。
暑くなってきたので、「ぷ〜〜〜ん」と不快な音を出しながら飛ぶ、あの虫に注目している人が多いようです。4位に『蚊に刺されやすいかどうかは、生まれつき決まっているらしい』がランクインしました。昨夏、デング熱の感染が確認されたこともあって、「なんとなく蚊が怖いなあ」と感じている人も多いのでは。デング熱はなぜ日本で感染したのか。国立感染症研究所の医科学昆虫部で活躍されている小林睦生名誉所員の話を聞く機会があったので、Q&A形式でご紹介します。
日本とイタリアのヒトスジシマカは同じ仲間
Q: 蚊とはどのような生物なのですか?
A: 世界では約3500種類、日本には約120種類の蚊がいます。夜、蚊の「ぷーーーん」という音で睡眠を妨げられることがあるかと思いますが、日本ではアカイエカが家に入ってきて、深夜の2時〜3時ごろに刺されることが多いのです。昼間に刺されることが多いのは、デング熱の媒介蚊であるヒトスジシマカ。このヒトスジシマカは夜も活動していて、20〜21時ごろにも刺されることがあります。
Q: 米軍は日本の蚊について調べたことがあるということですが、本当ですか。
A: 本当です。戦後、米軍は日本に進駐してから約5年かけて、日本にどんな蚊がいるのか調べました。その報告書によると、ヒトスジシマカは栃木県の北部まで分布していました。いまは、岩手県の盛岡市を越えて、青森県と秋田県の県境あたりで確認されています。約20年後には青森県全域に、2100年には北海道の札幌市近郊まで広がる、と予測されています。
ちなみに、ヒトスジシマカは日本から米国に“輸出”されました。そして、米国からイタリアに“輸出”されました。日本のヒトスジシマカとイタリアのヒトスジシマカは同じ仲間であることが分かっています。ではどうやって運ばれたのか。古タイヤの輸出が原因だと言われています。
日本は古タイヤの超輸出大国。なぜかというと車検制度がからんでいるんですよね。車検の際に「このタイヤはもう使えないよね」となれば、交換しなければいけません。ただ、外国の人からすれば、まだまだ使えるタイヤが日本で捨てられていることになります。なので、輸入して使う。しかしタイヤには水が貯まりやすく、そこに蚊が発生しやすい。そうしたモノが世界に流通しているんですよね。
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