出世に必要なのは、当たり前の「誠実さ」と「道徳心」:銀座で学んだこと(1/3 ページ)
30代半ばで不動産会社の専務にまで出世したAさん。彼の言う、出世する人に共通する「当たり前の誠実さ」とはどういうことなのか。
誠実にまさる知恵なし。 シラー
ドイツの詩人シラーの言葉です。シラーは起業家ではありませんが、今回は「出世」と「誠実」というワードでお話ししたいと思います。
世の中で出世される方の多くが「誠実」だと言うと、そんなことはないよ、と思われる読者もいるでしょう。ビジネス上お付き合いのある人に対して「誠実」な人は、ある程度の地位まで出世されますが、それ以上に出世される方は、ビジネスとは関係のない赤の他人にも「誠実」であり「道徳的な行い」を当たり前のようにされているのではないでしょうか。
出世するのは謙虚で誠実な人
私が大手不動産会社の専務取締役Aさん(60代)とランチをご一緒したときのことです。店内はデザートやコーヒーを楽しんでいる働く女性や、食後のコーヒーを飲み終えた男性がPCを広げて仕事をしているなど、ランチのピークを過ぎても大勢のお客さまでにぎわっていました。私たちは店内中央の大型テーブルに並んで座り、食事を楽しんでいました。
ウエイトレスが「デザートをお持ちしますか?」と話かけてくると、専務はそれに答えながらも電話を理由に中座されました。しばらくして戻って来たときにはデザートがテーブルに並んでいました。「ごめんね」と言って席に着いた専務は、私が食べ終わるころにはデザートを完食。「今日は別のところでコーヒーを飲もう」とおっしゃったので、そろって店を出ました。
以前から昼夜問わずこの店を利用していましたが、専務が大好物のデザートを時間をかけずに完食されるのも、コーヒーを別の店で……と提案されたのも初めてでしたので、私は不思議に思いました。しかし、店ののれんをくぐった際、遅めの昼食をとるためにサラリーマン風の男性が1人並んで待っていたのを見て、私は専務のお心を理解しました。
私たちの席からは店の前で待っているお客さまは見えませんでしたが、先の電話で店を出た専務はその男性に気付いたのです。
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