出世に必要なのは、当たり前の「誠実さ」と「道徳心」:銀座で学んだこと(3/3 ページ)
30代半ばで不動産会社の専務にまで出世したAさん。彼の言う、出世する人に共通する「当たり前の誠実さ」とはどういうことなのか。
相手が誰でも約束は約束
「誰に対しても誠実」というワードに適したエピソードをもう1つご紹介します。
銀座のみならず夜の世界には、「同伴」という女の子がお客さまと食事をご一緒し、そのままご来店いただくというシステムがあります。
大半のお店に同伴ノルマというものがあって、ヘルプ(自分のお客さまをまだ持っていないホステス)の女の子たちは毎月それをこなさなければなりません。また、通常の同伴ノルマとは別に「強制同伴日」というのもあり、“この日に同伴をしなければ何かしらの罰則”を課せられる日があります。多くの女の子は月末に配布されるカレンダーの強制日を確認して、お客さまに同伴のお誘いを始めるのです。
大半のお客さまは約束通り同伴をしてくれますが、なにぶんお忙しい方ばかりですので、当日どうしてもその方のご都合が悪くなったという場合は、友人や同僚など代理の方を立てられ、女の子との約束を反故(ほご)にすることは決してしません。
残念なことに、中にはこの約束を「ヘルプホステスとの約束だから」と安易に考え、直前にキャンセルされる方がいらっしゃいます。しかし、相手がナンバーワンのホステスでも、ヘルプでも、ママでも、約束は約束です。キャンセルをされたお客さまの「ヘルプホステスだから」という理由は、一般の会社に置き換えると、「新入社員との約束だからいいや」になります。
立場はどうあれ、以前からの約束をあっさりとキャンセルする。「今日はどうしても無理になってしまったけど、穴埋めはいついつで……」という話もなく、身勝手にドタキャンされる方というのは、やはりなかなか人の上に立つのは難しいようです。よくドタキャンをされる方が「○○会社のBさん、オレとのアポはいつも後回しなんだよな……」とぶつぶつ言っている姿を見ていて、やはり自分と相手は映し鏡なのだと感じました。
話を戻すと、大きな出世を果たされる方は当たり前の「誠実さ」と「道徳心」を忘れずに持っておられるようです。どのような相手にも誠実さを持って接していれば、その方の周りは誠実な方ばかりに、逆に不誠実な方の周りは不誠実となるようです。
桃谷優希氏のプロフィール:
1988年10月16日大阪府生まれ。16歳のときに処女作『デリンタ(悪魔の子)と呼ばれた天使たち』(文芸社)でデビュー。このほか『国民の声』(文藝書房)に寄稿、『罪追人』(文藝書房)、今春『赦れる天秤』を刊行予定。
京都ノートルダム女子大学卒業後、北新地のクラブへ。クラブ「城」閉店後、銀座に移籍。銀座40周年の老舗「クラブセントポーリア」でナンバーワンの座を手にして、その後26歳の誕生日に某有名店のママに就任。
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