連載
続編準備中? 少年A『絶歌』の社会的意義:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
元少年Aが著した手記『絶歌』が売れている。出版をめぐり賛否両論が巻き起こっているが、筆者の窪田氏は「世の中に出た意義がある」という。なぜなら……。
次の戦略は「続編」?
このような戦略をとる太田出版としては当然「次」も考えているはずだ。そう、続編である。
書評などでいろいろな方がご指摘している通り、『絶歌』はほとんど我々が知りたいと思うような内容は書かれていない。誰かが「中ニ病」と評していたが、自分がいかに苦しいかということだけが、有名小説家を意識したようなナルシスティクな文体で延々と綴られているだけで、肝心要の性的サディズムをもつにいたった経緯や、「病」の遠因でもあるとされた母親との関係など、自身に都合の悪い話はゴソッと抜けているのだ。版元ですらも、「彼の手記には今にいたるも彼自身が抱える幼さや考えの甘さもあります」(参照リンク)と認めるように、内面をさらけ出すとは言い難い内容なのだ。
ただ、こういう“読後感の悪さ”も商機へ結びつけることができる。「絶歌では語られなかった真相を語る」とか「すべての批判に元少年Aが答える」みたいなコンセプトで続編を出すのだ。あるいは、『絶歌』を猛烈に批判している者や、心理学者、ジャーナリストなんかに寄稿してもらい、「絶歌とは何だったのか」みたいな解説本をつくる。巻末に「元少年A」による発売後の心境を綴った手記を掲載すれば初版20万部はかたい。太田出版では過去に『完全自殺マニュアル』が物議を醸した後、識者の見解を集めて『ぼくたちの「完全自殺マニュアル」』という解説本を出版して見事に“スピンオフ”を成功させた実績もある。
関連記事
- 「日本は世界で人気」なのに、外国人観光客数ランキングが「26位」の理由
日本政府観光局によると、2014年に日本を訪れた外国人観光客は2年連続で過去最高を更新した。テレビを見ると「日本はスゴい」などと報じているが、国別ランキングをみると、日本は「26位」。なぜ外国人たちは日本に訪れないのか。その理由は……。 - 電気シェーバー市場で、日立だけが「ロータリー」にこだわり続ける理由
電気シェーバーを買おうと思ったら、「たくさんの種類があってどれを選んだらいいのか分からない」と感じた人もいるのでは。「回転式」「往復式」が多い中で、日立だけが「ロータリー式」を扱っている。その理由を調べていくと……。 - なぜ“バターみたいなマーガリン”が増えているのか
夏の猛暑が原因で、昨年スーパーの棚からバターが消えた。ここにきてようやく商品が並ぶようになったが、最近は“バター風マーガリン”が売れているという。少し前まではマーガリンがバターをうたう商品は少なかったのに、なぜ急に増えてきたのか。 - 「LEDよりも省エネで明るい」という次世代照明がなかなかブレイクしない理由
「CCFL(冷陰極管)」という照明をご存じだろうか。LED照明にも負けない省エネで低価格な製品だが、筆者の窪田氏は爆発的な普及は難しいという。なぜなら……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.