「言い間違い、聞き違い」をなくすために、パイロットは何をしているのか:水曜インタビュー劇場(パイロット公演)(4/5 ページ)
パイロットは飛行機を操縦し、お客さんを運ばなければいけないので、スタッフとのコミュニケーションにエラーが生じてはいけない。ミスをなくすために、彼らはどんな教育を受けているのか。JALでパイロットの“先生”をしている人に話を聞いたところ……。
土肥: なるほど。この絵に描かれている人たちの服装を見ると、半そでの人が多いですね。なので、季節は夏かな。それにしても、なぜこんなことをされているのですか?
塚本: 例えば、滑走路を走っていて、飛行機が右から来るのを見たととします。そのあとに、どんなことが起きるのかを予測しなければいけません。自分の前を通る可能性があるので、管制官から「止まれ」の指示が飛んでくるかもしれない。自分が速く行かなければいけないのであれば、ちょっとスピードを上げて先に行くことができるかもしれない。パイロットはさまざまな状況を判断して、決断しなければいけません。そのためにはたくさんの情報をひろって、判断につなげることができるのかがポイントになります。
土肥: パイロットの“先生”をされている塚本さんに聞きたいのですが、先生はコミュニケーションがうまくとれずに“失敗”したことはないのですか?
塚本: 実は……あります。飛行機を操縦しているときに、前を飛んでいる飛行機から「そのあたりは揺れるぞ」と連絡が入りました。そのことを聞いた私は、客室乗務員にこのように言いました。「前を飛んでいる飛行機から連絡が入った。○分後に揺れるかもしれません」などと。そんなことを1分ほど話したところ、客室乗務員に「ベルト着用サインはつくのですか?」と聞かれました。彼女にとって「前の飛行機から連絡が入った」とか「○分後に揺れる」といった情報はそれほど重要ではないんですよね。最も重要なことは「ベルト着用サインがつくかどうか」。それによって対応が違ってきますから。
つまり、「説明」の失敗なんですよ。相手が知りたいと思っていることを、最初に伝えなければいけません。聞いている人は「ベルト着用サインはつくのかな、つかないのかな」とやきもきしながら話を聞いている。ひょっとしたら、私が話した「前の飛行機から連絡があった」といったことは覚えていないかもしれません。冒頭に「ベルト着用サインはつく」と言っていれば、客室乗務員は「なるほど、つくのですね」となって、その後の対応を素早くとれますからね。
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