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「大人の休日倶楽部パス」は本当にズルいのか?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)
「大人の休日倶楽部」はJR東日本が展開する会員制旅行事業だ。会員数は約170万人。この会員向けの乗り放題きっぷ「大人の休日倶楽部パス」がおトクすぎてズルいと話題になった。しかしこれは会員向けの利益還元策にすぎない。
大人の休日倶楽部とジパング倶楽部の違い
大人の休日倶楽部は、JR東日本の会員組織だ。満50歳以上を対象とした「大人の休日倶楽部ミドル」と、男性満65歳以上、女性満60歳以上を対象とした「大人の休日倶楽部ジパング」がある。どちらも提携クレジットカードの契約が必要だ。
このほかに、JRグループ6社が共同運営する「ジパング倶楽部」があって、JR東日本でも入会できる。こちらは年会費のみでクレジットカードは入会不要。ただし、大人の休日倶楽部限定の商品やサービスは購入できない。
ややこしいけれど、もともと、国鉄時代の1985年に発足したジパング倶楽部があり、乗車券の割引や企画きっぷの販売を実施していた。国鉄が分割民営化されてJRが発足しても組織は維持され、JRグループ共同運営となった。そこに、JR東日本だけが独自の付加価値を与え、クレジットカードサービスと組み合わせたアップグレード版を作った。これが大人の休日倶楽部だ。
だから、大人の休日倶楽部ジパングの会員になると、JR東日本版ジパング倶楽部の会員資格も得られる。一方、JR東日本版ジパング倶楽部の会員は、クレジットカード年会費をプラスすると、大人の休日倶楽部ジパングの資格を得られる。そして、大人の休日倶楽部ミドルは、ジパング倶楽部では対象外の満50歳以上を対象としている。もちろん将来の大人の休日倶楽部ジパングの入会に向けた囲い込みでもある。
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