「大人の休日倶楽部パス」は本当にズルいのか?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)
「大人の休日倶楽部」はJR東日本が展開する会員制旅行事業だ。会員数は約170万人。この会員向けの乗り放題きっぷ「大人の休日倶楽部パス」がおトクすぎてズルいと話題になった。しかしこれは会員向けの利益還元策にすぎない。
大人の休日倶楽部の会費収入は約52億円
大人の休日倶楽部の年会費収入を試算してみよう。会員数など必要なデータは、会員向け雑誌の広告媒体資料にある。これはJR東日本グループの広告事業会社、ジェイアール東日本企画が公開している(参考リンク)。
資料によると、2013年11月現在で約170万人。内訳はミドルが約67万人、ジパングが約103万人だ。ミドルの年会費は2060円。ジパングの年会費は3770円。それぞれカード年会費が500円かかるけれど、それはカード会社に渡るお金だから省く。もしかしたらキックバックやカードショッピングの手数料収入があるかもしれないが、それもここでは省く。
ミドルとジパング、それぞれの会費と会員数を掛ければ総額が分かる……わけではない。ジパングについては、夫婦で入会すると会費が割引になり、2人で6290円になる。ジパングの単身者と夫婦の比率は非公開。そこで、ジパング会員向け雑誌の発行部数に注目する。夫婦会員の場合は1世帯に1冊しか届かないからだ。ちなみに、広告媒体資料にはミドルとジパングの両方に送ると書いてあるけれど、それは2014年から。データは2013年だから、当時の発行部数はジパングのみに送っていた数字だ。
大人の休日倶楽部ジパングの会員数は約103万人、会員向け雑誌は約101万部。差し引き2万人は会員向け雑誌が届かない。つまり世帯に含まれる人だ。この数の2倍の4万人が夫婦会員だ。約103万人から約4万人を差し引いた約99万人が単身者会員となる。
この数字を基に、ミドル会費2060円×67万人、ジパング夫婦会費6290円×2万組、ジパング単身者会費3770円×99万人として合算すると、会費合計は52億3830万円となる。
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