ビールのアイコンを揺るがす、米国ビール業界の異変:来週話題になるハナシ(2/4 ページ)
米国のビールといえば「バドワイザー」を想像する人も多いのでは。米国のカルチャーに大きな影響を及ぼしてきたバドワイザーが、いま苦戦しているのだ。売り上げが減少している理由は……。
クラフトビールとは何
そもそも、クラフトビールと聞いてもピンとこない人もいるのではないだろうか。そこで少しクラフトビールとは何かを説明したい。
米国で定義されて世界に広まりつつあるクラフトビールは、3つの条件に当てはまる必要がある。ひとつめは、「SMALL(規模が小さい)」であること。具体的には、生産量が年間600万バレル以下のことを指す。次に、運営が「INDEPENDENT(独立している)」であること。具体的にいうと、クラフトビールに携わっていないアルコール業界関係者による運営への関与が25%以下であること。最後に、ビールの製造製法が「TRADITIONAL(伝統的)」であることだ。つまり欧州の伝統に基づいた醸造方法や原料が求められる。
では、なぜいま米国でクラフトビールへの支持が高まっているのか? 理由のひとつに、その味わいの深さがある。バドワイザーのような大量生産の単調なビールと違い、クラフトビールは複雑で個性的な味わいが特徴だ。基本的には、モルト(穀物を発酵させて麦芽にしたもの)、ホップ、イースト、水から作られるのだが、使用する原料や組み合わせにより、個性的なフレーバーが生まれる。
クラフトビールの原料で、特に重要なのがホップだ。ホップは、ビールの泡を安定させるだけでなく、防腐効果としても作用する。さらに、醸造の過程で「苦味」を加えたり、「香り」を引き出すのにも重要な役割を果たす。1970年代ぐらいまで、米国産のホップは苦味用にしか使われず、香りづけには欧州産のホップが使われるのが主流だったようだ。だが今では米国内でも香りづけに適した「Cascade(カスケード)」という品種のホップが栽培され、クラフトビールの発展に貢献している。
ちなみに、ホップはとてもデリケートで取り扱いが難しいため、コストが割高だ。加えて苦味のないマイルドな味にするため、ビッグブランドのビールでは使用量が少ない。さらに伝統的な醸造方法と違い、ビッグブランドはモルトに大麦ではなくコーンや米を使用するため、薄い色のラガーに仕上がっている。そこが、クラフトビールとの大きな違いだ。
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