「世界に通用する日本みやげ」に必要な“よそ者”視点:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
観光庁主催の「世界にも通用する究極のおみやげ」というイベントが開かれ、最終的に「目利き」と呼ばれる審査員によって9品が選ばれた。しかし、本コラムの筆者・窪田氏は違和感を覚えたという。なぜなら……。
外国人観光客側の視点がない
そりゃすごい、それなら信用できるという人もいるだろうが、個人的には大きな違和感を覚える。この20人がどうのこうのという話ではない。「世界に通用する日本ブランド」を日本人だけで選ぶのというのが不思議なのだ。日本みやげを実際に世界中へデリバリーする当事者は、外国人観光客だ。その視点がゴソッと抜けている。
ぶっちゃけ、「日本の卸と流通がすごいって言ってんだから、黙って買って帰りゃいいんだよ」というかなり上から目線のロジックを押し付けられているような気がするのだ。
このイベントから2年が経ち、中国人観光客は炊飯ジャーやら化粧品やらキティちゃんを「爆買」している。今後、日本が増やしていかなければいけない欧米からの観光客の間では「キモノ」の人気が広がっており、浅草の中古着物屋では客の3割が外国人観光客だという。
こういう「外国人に人気の日本みやげ」のトレンドはよく聞くが、20人のプロたちが「世界に通用する」と太鼓判を押したおみやげの評判は残念ながらなかなか耳に入ってこない。供給者側がどんなにゴリ押しをしても「ブランド」は生まれないということだ。
なんて思っていたら、このイベントの第2弾が始まった。今度は復興庁も巻き込んで東北を舞台に「究極のおみやげ」を選ぶそうで同じメンツが現在、選考をしているらしい。
訪日観光客3000万人を目指す日本にとって「究極のおみやげ」をつくらなくてはならないのは大賛成だが、「モンドセレクション日本版」のような勲章をいくらつくってもあまり意味がない。あれだってありがたがっているのは日本人だけではないか。
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