ワールドカップ準優勝から考える「今後のなでしこ」:赤坂8丁目発 スポーツ246(3/4 ページ)
サッカー・ワールドカップで、なでしこジャパンが準優勝を手にした。史上2チーム目となる連覇こそ逃したが、「よくやった」という声が多い。しかし、本当にこのままでいいのか。スポーツライターの臼北氏は、女子サッカーにまつわる問題点を指摘している。
生計が立てられないケースも
この世代交代をスムーズに遂行させるためには、やはり今W杯で優勝した米国、そして欧州の強豪国のようにU-23(23歳以下)代表チームの活動をより充実させなければならないだろう。日本も昨年から「追いつき追い越せ」とばかりにこの年代の代表チームの活動に本腰を入れ始めたが、まだまだ米国や欧州との差は歴然としている。下の世代からの底上げをどんどん図り、優秀な人材をトップチームに引き上げるエレベーター方式の確立が求められるところだ。
そして――。何よりも「なでしこ」のメンバーには“やってあげなければならないこと”がある。待遇の改善だ。今W杯の準Vの賞金は前回のドイツ大会よりも大幅に増額されて140万ドル(約1億7000万円)になった。これを分配した額を各選手たちは手にすることになるが、これだけ日本を盛り上げたのだから「なでしこ」のメンバーやスタッフたちには国が報奨金を用意するなどしてもっと労をねぎらってもいい。
ちなみに「なでしこ」代表メンバーの中には「なでしこ海外強化指定選手」として日本サッカー協会から1日1万円が支給されている選手も多くいる。とはいえ、それでも「十分な補償」とは言い切れないだろう。
しかもメンバーの多く(海外クラブ所属メンバーを除く)が普段所属する日本女子サッカーリーグ(愛称「なでしこリーグ」)での待遇は、恵まれているとは言い難い。同リーグでプロ契約を結んでいる澤や宮間、川澄奈穂美(INAC神戸レオネッサ)らの年俸が500〜600万円(個々のCM契約料などは別)と言われており、その他の選手の中には「350万円にも満たないプレーヤーもいる」(日本女子サッカーリーグ関係者)そうだ。
こうしたプロ契約を結んでいる選手はまだ恵まれているほうで、アマチュア契約のプレーヤーはスーパーでのレジ打ちや警備員、あるいはボウリング場の係員のアルバイトなどをしなければ生計が立てられないケースが多いという。代表チームの「なでしこ」に多くの選手を輩出するINAC神戸レオネッサのようにアマチュア契約の選手を協賛企業の契約社員として雇用するクラブは、同リーグの中ではまだまだ少ない。
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