新国立競技場計画の破たんと“ごまかし”:社会インフラを考える(4/5 ページ)
東京五輪・パラリンピックのメイン競技場となる新国立競技場の建設計画。抑制されたはずの建設コスト見積もりにも、建設完了後の収支計画の説明にも、明らかなごまかしがある。
妥当シナリオを想定
ここで今ある情報に基づき妥当シナリオを想定してみよう。
建設当初の数年間は可動式の屋根ができていないため赤字になるとJSCはいう。毎年数〜10億円程度の赤字としよう。
数年後に300億円ほどの追加費用を掛けて可動式屋根を追加設置、その後仮に20年ほど幸運にも故障なしに運用できたとして、既に見た通り楽観シナリオの下でギリギリの収支である。実際には1〜2億円程度の赤字は避けられないのではないか。
その後は数年に一度の(しかも頻度は段々高まる)改修工事のたびに100億円ずつ吐き出すばかりか、故障期間は雨天時に使えない、工事期間は全く使えない、となれば収入はガクンと落ち込む。平均して毎年20億円近くの赤字を積み重ねることになるだろう。
こんな収支計画の事業をGOさせる経営者がいたら、お目に掛かりたいものだ。間違いなく負の遺産になろう。
(3)納期に関するごまかし
見直しをしない理由として、関係者は「今から国際コンペをやり直して設計を詰めてから建設するとなると、2020年の五輪に間に合わない」という。安倍首相もこのため変更を断念したという。本当にそうだろうか。
まず、国際コンペをやり直す必要はない。デザインコンペは既に実施されており、ザハ・ハディド氏のデザインがどうしても予算内に収まらないということで失格するとしたら、次点とされた作品を選ぶのが筋だ(もちろん予算内に収まるという条件の下ですが)。
これから基本設計そして詳細設計、さらに実施計画を詰めると五輪に間に合わないというのは本当だろうか。まだ5年あるのだ。
ザハ・ハディド氏のデザインに基づく特殊な構造の場合にはそうかも知れないが、もっとまともな構造であれば、日本の建設業界の設計力・実行力をもってすれば十分可能ではないか(ただし、工事ピーク時前後には周辺のあちこちに臨時の資材置き場を設ける、などの工夫も必要となるかも知れない)。
JSCのいう「間に合わない」対象は本当に東京五輪なのか、かなり疑わしい。本当は政界・スポーツ界に隠然たる影響力を持つ森喜朗・元首相がかねてご執心の、2019年9月からのラグビー・ワールドカップ日本開催に間に合わない、ということなのではないか。安倍首相と菅官房長官は関係者を問い詰めるべきだ。
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