コラム
新国立競技場計画の破たんと“ごまかし”:社会インフラを考える(5/5 ページ)
東京五輪・パラリンピックのメイン競技場となる新国立競技場の建設計画。抑制されたはずの建設コスト見積もりにも、建設完了後の収支計画の説明にも、明らかなごまかしがある。
責任の所在に関するごまかし
(4)責任の所在に関するごまかし
下村文科相はデザインの審査委員長を務めた安藤忠雄氏に(先日の有識者会議を欠席したことに絡めて)「説明を求めたい」と批判している。当初見積もりが甘かったことに全ての責任を負いかぶせようという意図が透けて見えるものだ。確かに安藤氏に非がないとも思えないが、「第一級戦犯」ではなかろう。
本当に責任を取るべきは、過去に何度もあった見直しの機会に、当初のデザイン案をあきらめて基本設計を見直すという決断を先送りしてきた文科省とJSTの幹部である。とりわけ、最後のチャンスでありながら今また、見直しをせずに他に責任をなすりつけようとしている最高幹部の下村文科相の責任こそが重大ではないか。
改めて感じるのは、これほど「ごまかし」を重ねてでも関係者が基本設計の見直しに踏み切らないのには、よほどの理由があるのだろうということだ。
関係者や事情通は「国際的信用」や「無責任の構造」、先に触れた森・元総理への遠慮、などをいろいろと挙げる。しかしそれにしてもここまで政治問題化しながらも文科省とJSCが強引に世論に抗するのは、今一つ腑に落ちない。もしかすると我々の知らない巨悪の構造が隠れているのかも知れない。ジャーナリストの活躍を待つ所以である。(日沖博道)
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