オワハラは企業自らをオワらせる:致命的(1/3 ページ)
大学生の就活が本格化するとともに、学生の間からオワハラ問題が出ています。人事政策上、今の学生の心情を無視したオワハラは企業自身に致命的なマイナスを呼ぶ可能性があります。
著者プロフィール:増沢隆太(ますざわ・りゅうた)
RMロンドンパートナーズ(株式会社RML慶文堂)代表取締役。東京工業大学特任教授、コミュニケーション戦略家。人事コンサルタント兼大学キャリア教官兼心理カウンセラーで、東工大大学院では「コミュニケーション演習」の授業を行っているほか、企業では人材にも「戦略性」を重視する功利主義的アクティビティを提唱している。
大学生の就活が本格化するとともに、学生の間からオワハラ問題が表出しています。人事政策上、今の学生の心情を無視したオワハラは企業自身に致命的なマイナスを呼ぶ可能性があります。
内定を出す代わりに、今すぐ就活を止め、他社の選考を終われと強要するのがオワハラですが、特に優秀な学生への囲い込みが強まっており、経団連指針が8月1日開始とした採用活動開始では、それに縛られない企業と学生の間には内々定も既に出始めており、オワ「ハラ」と呼ばれるようにハラスメントとなっている点が重大です。
オワハラの効果と危険性(リスク)
戦略的な採用を提唱する立場から、現在行われているといわれるオワハラは非常にリスキーな手段だといえます。囲い込みで欲しい学生をキープできるメリットと同時に、失敗すれば企業のブランドイメージに致命的なダメージを与えかねないからです。
採用プロセスにおいて、欲しい学生を自社に確定させることはクロージングです。クロージングとは交渉のヤマ場です。どれだけ良好な関係を築けたとしても、クロージングに失敗して交渉は成り立ちません。逆にいえば、クロージングに成功しさえすれば、極端な話、長い時間をかけた良好な関係作りも、接待も華麗なセールスツールも不要です。
営業のベテランなど交渉のプロは、このヤマ場においての力加減が絶妙です。強すぎず弱すぎず、正に相手に応じて変幻自在の対応によって交渉を成立させるのです。もちろんここにマニュアルや正解などありませんから、交渉のプロたちは自らの経験と勘をベースに、インテリジェンスを総動員して交渉をまとめます。営業に接待が欠かせないのではありません。交渉のカナメとして、接待での関係強化が有効だから接待をするのです、この戦略判断の順序を間違えれば、接待が目的化してしまい、無駄な営業経費がたれ流される恐れがあります。
また交渉の相手の心情をどこまで読めるかも交渉の帰結を決める上で重要です。就活の場合相手は大学生になりますが、今の学生のメンタリティを本当に理解しているでしょうか。企業が思う以上にネガティブな情報は学生間であっという間に広がります。特に今やバズワードとなっているオワハラは、採用したい学生=優秀な学生の間に、致命的な企業イメージの毀損となって広まってしまう恐れが高いのです。
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