オワハラは企業自らをオワらせる:致命的(3/3 ページ)
大学生の就活が本格化するとともに、学生の間からオワハラ問題が出ています。人事政策上、今の学生の心情を無視したオワハラは企業自身に致命的なマイナスを呼ぶ可能性があります。
戦略コミュニケーションの視点が抜けたオワハラ
全国の大学でキャリアの指導をしてきましたが、その際に強調するのは「“至誠は天に通ずる”とは限らない」という現実です。私からするときわめて疑問を感じる「願いはいつかかなう」「夢をかなえることがキャリア」というような思い込みに毒された若い人たちは多いと感じます。私のキャリア教育は逆で、「思いが通じないこともある」「夢は自分の希望(欲望)であって、相手にも希望がある」という、社会の現実とバランスを理解させることが重要だという信念です。今の子供たちには思いがかなわない時でも、つぶれずに前に進む心構えを教育することが欠かせないと思うからです。
「第一志望の企業の面接に進めたので、面接の場で感激して泣いてしまった」という学生のエピソードを聞いたことがあります。熱意は分かりますが、それはコミュニケーションではありません。一方的な熱意の押し売りです。「相手目線を持つ」というコミュニケーションの原則がすっぽり抜け落ちています。逆に相手目線が理解できた学生は、正に社会人としての適性が生まれ、そのことが伝わるようになればエントリーシートも面接も驚くほど進むように変わります。
学生へのキャリア指導、コミュニケーション教育ではこうした点を常に強調していますが、社会人代表である採用担当者はどうでしょう。オワハラとはこのコミュニケーション原則が全く抜け落ちた、非常にお粗末な施策といわざるを得ません。目の前のクロージングを急ぐあまり、相手目線を忘れた拙速な交渉であり、コミュニケーションです。採用の戦略目標を今一度確認していただき、真に優秀な戦力獲得に結び付くものは丁寧なコミュニケーションであって、学生を圧迫して無理やりサインを取るような、コーポレートブランドを毀損する手法ではないことを思い起こして下さい。
特に経営者の方と人事担当役員の方、人事担当を単なる内定・内々定者数だけで評価することがオワハラを呼び、結局貴社の悪いイメージが10倍増されて学生間、それも採りたいような優秀な学生間に広まるのです。もしこれまでの年に比べてかなり高い内定状況の報告が上がった際は、このようなことが貴社で起きていないか、ぜひとも確認をお願いします。(増沢隆太)
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