「サステイナビリティ」をテーマにNYで起業した女性が語る、企業が直面し始めた課題とは?:日米のビジネス事情の違いを知る(3/8 ページ)
米国でのビジネスに力を入れる日本人アントレプレナー(起業家)は、どんなことに興味をもっているのだろうか。ニューヨーク在住歴17年の女性起業家、関口匠子さんに話を聞いた。
激動の通信業界に在籍し、一夜にして会社が様変わりする様子を見た
関: ちょうどそのころって、山一ショック(山一證券が倒産した事件)の辺りですよね。
関口: そうですね。その後には、いわゆる「.comバブル」の崩壊もありました。たまたま私は「.com」の業界にはいかなかったのですが、ワシントンD.C.にあるMCIに在籍していたころは、「AOL」など名立たる企業が、ワシントンD.C.のバージニア州にボコボコ出始め、何億、何十億を調達するような、そういう世界がどんどん広がっていました。けれど数年もしないうちに、それらが全く裏目に出たんですね。「さて、皆さんこれからどうするの?」 とでも問われているかのような、大きな“崩壊”が起こりました。
関: 私は以前、『日経コンピュータ』という媒体で記者をしていたので、当時の通信業界を取材していて、米国にもよく来ていました。今の状況はずいぶんと変わってしまいましたけれど、当時は通信って、すごく面白い分野でしたよね。
関口: 本当にそうですね。残念ながら今は輝きが薄れちゃいましたけれど。インターネットの回線も非常に安くなって、セクシーさがなくなってしまったというか。
関: あの時はいわゆる、昔からある「AT&T」みたいなものもあれば、関口さんがいらっしゃったMCIを吸収合併した「ワールドコム」みたいなのもあって。AOLは気づけば、「タイム・ワーナー」を買っていましたし。
関口: そう、すごかったんですよ。面白い時期に、通信の世界を見させてもらったという感じですね。私がMCIで在籍していたマーケティング部門は、いわゆる「クラウン・ジュエル=王様の冠」と言われているところでした。クラウン・ジュエルというのは、買収される時に一番価値が高い場所としてみなされる部分のことです。それは、製品のこともあれば、チームのこともありますし、マネジメントやカルチャーの場合もあります。
そうした「最も価値が高い」とみなされる場所(クラウン・ジュエル)が、たまたま私たちがいた部門だったんですが、ワールドコムがやって来て、部署に何百人もいたマーケーターを活用したかというとそうではなく、代わりに上の人をどんどん辞めさせ、ワールドコムの人たちを次々にそこに配置しました。加えて、今まで多額の投資をして成功させていた数々の案件が切られるばかりか、バジェット(予算)もなくなっちゃったという有り様で。まさに、一夜にして状況が様変わりしてしまいましたね。
その後ニューヨークは9.11を経験するわけですが、幸いその時私は、英国大手の「Cable & Wireless」でSAPのグローバルロールアウトのコンサルタントとして、ロンドンにいました。その後も、「インターナップジャパン」という、NTT持株会社とITインフラ全般を提供するインターナップ社の合弁でできた会社で働くために、ニューヨークを離れていました。
今でこそ状況は良くなりましたが、当時のインターナップジャパン社はあまり社内外でのコミュニケーションがうまくいっておらず、難しいところにあったので、私に声がかかり、1年間コンサルタントとしてボードミーティングにも参加し、戦略から営業までこなしていたんです。日本の大きなNTTと、米国の小さな会社が手を組んでいろいろやろうという、面白い取り組みの始まりでした。
こんな風に、業界全体で興味深い動きがたくさんありましたが、今残っている会社はわずかになりました。私が昔いたPwCも、所属していた部署がIBMに買われてしまったとか。私が行く会社会社、全部買われてしまったという感じですね。
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