「サステイナビリティ」をテーマにNYで起業した女性が語る、企業が直面し始めた課題とは?:日米のビジネス事情の違いを知る(8/8 ページ)
米国でのビジネスに力を入れる日本人アントレプレナー(起業家)は、どんなことに興味をもっているのだろうか。ニューヨーク在住歴17年の女性起業家、関口匠子さんに話を聞いた。
NYで学んだことを、日本企業に還元することが大きな価値になる
関: 一口にコンサルと言ってもいろいろな形があると思いますが、Ampleenではどんな風に展開しているのでしょうか?
関口: サステイナビリティを実行するための基本的なプラットフォームはありますが、企業によって必要とされるものが変わってくるので、話を聞いた上で、カスタマイズしてプログラムを組み立てています。
例えば、「ウチの従業員に今一番大切なのは、グリーン(エコ)のプログラムだから、『環境』に関するプログラムをつくってください」というお客さまもいますし、もしくは、「ウェルネス」という観点でいくと「『ストレスマネジメント』が問題になっているので、それを主体にしながら、グリーンプログラムもやっていきましょう」というお客さまもいます。お話を聞きながら、要望に沿った形でご提案しています。プログラムができたら、直接人を送ってトレーニングをしたり、どれだけサステイナビリティが実現されてきたかレポートを作成し、提出したりもします。
関: 期間はあるのでしょうか?
関口: 期間は会社によりけりですが、例えば、プログラムの終了まで6〜9カ月かかるお客さんもいれば、3カ月で完結するお客さんもいます。規模によっても変わってきますね。今はとある大学もクライアントなのですが、規模が大きくなればなるほど、いろいろな部署や部門に働きかけなきゃいけないので、その分時間はかかります。
関: 米国のクライアントは、東海岸中心ですか?
関口: はい。なぜ西海岸じゃなく、東海岸(ニューヨーク)なのかというと、西海岸はすでにいろいろなサステイナビリティに関するプログラムがあって、人もつながっているからです。対してニューヨークは、まだまだサステイナビリティに関しては駆け出し。これだけ多くの企業がひしめいている中で、まだ皆の潜在能力が眠っている状況なので、一社でも多くの企業のサポートができたらいいですね。今は、少しずつ増えてきた仲間と共に結託しながら、広い広いマーケットを泳いでいる感じです。
関: 日本企業をコンサルする場合には、実際に日本まで行かれるんですか?
関口: 今は、Skypeなどオンラインで対話することが多いです。
関: 今後、クライアント数が増えてきた場合には?
関口: そういった時には、日本に誰か人員を送れればと考えています。
関: ニューヨークを離れるつもりはありますか?
関口: 今のところはないですが、将来的にニューヨークと日本を半分半分なら、あり得るかもしれないですね。
関: じゃあ当面ベースはニューヨークでと。
関口: ええ。それはなぜかというと、日本企業にどっぷり浸かっちゃうと、多分自分の成長機会の限界が来るかなと思うからです。ニューヨークでさまざまな人から吸収した“貯金”をたくさん持っているうちは、大盤振る舞いして、「どうぞどうぞ!」ってできますけれど、その“貯金”が尽きて、相手にももたらせるものがなくなってしまったら、長続きしないんじゃないかなと思うんですよね。
新しいことを絶えず学び続けて吸収するには、やはり日本だけでは物足りないところがあります。ニューヨークでいろいろな方とお会いし、学び、私自身も成長しながら、日本企業のお手伝いをすることが、おそらく一番新しいことを日本の皆さんにお伝えできると思うので、それが大きな価値になると信じています。
(終わり)
関連記事
- 日本人のここがズレている! このままでは「観光立国」になれません
「訪日客が1300万人を突破」といったニュースを目にすると、「日本は観光立国になったなあ」と思われる人もいるだろうが、本当にそうなのか。文化財を修繕する小西美術工藝社のアトキンソン社長は「日本は『観光後進国』だ」と指摘する。その意味とは……。 - なぜ小さな会社が、“かつてないトースター”をつくることができたのか
バルミューダがこれまでになかったトースターを開発した。最大の特徴は、表面はさっくり焼けて香ばしく、内部は水分をしっかりと閉じ込めてふわふわ。そんな食感を楽しむことができるトースターを、なぜ従業員50人の会社がつくれたのか。 - 病院検索サイト「ZocDoc」のエンジニアは、どんなビジネスを考えているのか
全米展開する病院検索レビューサイト「ZocDoc」で、日本人唯一のエンジニアとして活躍する奥西正人氏は、近い将来独立するという。どんなビジネスを始める予定なのか。ニューヨークでSix ApartのCEOを務める関信浩氏が聞いた。 - 生産台数9000万台超! ホンダのスーパーカブがスゴい
世界中で販売されているスーパーカブ(ホンダ)の累計生産台数が9000万台を超え、あと数年で1億台を突破しそうだ。50年以上前に発売されたスーパーカブは、なぜ今でも売れ続けているのだろうか。ホンダの広報部に聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.