「サステイナビリティ」をテーマにNYで起業した女性が語る、企業が直面し始めた課題とは?:日米のビジネス事情の違いを知る(7/8 ページ)
米国でのビジネスに力を入れる日本人アントレプレナー(起業家)は、どんなことに興味をもっているのだろうか。ニューヨーク在住歴17年の女性起業家、関口匠子さんに話を聞いた。
関: 結局利益を生み出し、会社が存続しないことには、いくら良いことを言っていても、会社が停止してしまいますからね。それは最悪のパターンです。
関口: 大和総研主席研究員の、河口真理子さんという方がいらっしゃいます。日本国内でのCSRとか、サステイナビリティの草分けになっている方です。彼女は、「『プラネット(環境)×ピープル(人)×プロフィット(利益)』。この3つの『P』がないと、サスティナブルじゃない」という観点より、さまざまな提案をされています。
私もこの考えに沿っているので、企業にコンサルする際も、決して「環境」だけにこだわっているのでも、「人の労働条件」だけにこだわっているわけでもなく、「環境×人×利益」を、根底に置くようにしています。三者すべての条件が満たされない限り、ビジネスの持続は不可能だからです。
私は今、日本企業のお手伝いもしていますが、基本は、東海岸にある米国企業の支援を行っているので、これからは日本企業にももっと「サステイナビリティ」の重要性を訴えかけていきたいと考えています。特に日本の大手自動車メーカーなんかは、世界の顧客を相手にしているわけですから、自分たちのモノづくりにかける思いや社会貢献活動などを、どんどん消費者にアピールをされるべきではないかと思います。
関: 日本の場合は、「自分たちは良い行いをしています!」と、あからさまに見えてしまうことを、良しとしない風潮があるのが難しいところですよね……。
関口: そうですね、日本には、「人を助けるのは当たり前」という暗黙の了解がありますからね。でもそれは本来当たり前ではなく、どんどん世界に伝えないといけないことなんです。だって、先ほど関さんがおっしゃっていた通り、世界のマーケットを狙っているわけですから。
日本はモノづくりを得意としている企業が多いですけれど、これだけモノが溢れた世の中では、ただ素晴らしいモノを作っているだけでは負けてしまいます。多くの人が使っているApple製品が良い例ですけれど、そこに、「作り手の思いが込められた何か」がないと。これからは、こうしたマインドを日本も取り入れて、「正しく伝えることは、価値があることなんだ!」と思ってもらえる文化に変わっていくといいですね。
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