「サステイナビリティ」をテーマにNYで起業した女性が語る、企業が直面し始めた課題とは?:日米のビジネス事情の違いを知る(6/8 ページ)
米国でのビジネスに力を入れる日本人アントレプレナー(起業家)は、どんなことに興味をもっているのだろうか。ニューヨーク在住歴17年の女性起業家、関口匠子さんに話を聞いた。
「環境×人×利益」の三者がそろわなければ、「サステイナビリティ」の実現は難しい
関: 私自身は、2003年にシリコンバレーのスタートアップとして始まった「シックス・アパート」という会社に在籍しているのですが、起業当初は「.comバブル」がはじけた余波が残っている中で、VC(ベンチャー・キャピタル)からの投資もほとんどなく、全体的にすごく低調なころでした。
そんな中、「インターネットで何をやっていくのか?」というスタートを切ったのですが、私たちは「Movable Type」というブログのツールを作っていたので、社会全体にブログのツールを提供することで、“一般の人がマスメディアとは異なる意見表明ができる”というミッションが組み込まれていたことが良かったと思っています。「会社のゴールは、単なる利益追求じゃないんだ」「自分たちがやっていることは、社会に役に立ついいことなんだ」というマインドが全社員に行き届いていると、もちろん給料は大企業より安いけれど、それでもここで働きたい。ミッションを遂行したいから残業をする、という風に気持ちが切り替わっていきます。そこが企業の成長を支える部分になったのかもしれません。
関口: それはおっしゃるとおりですね。今は米国のスーパーマーケットの中でも「ホールフーズ」がメインストリームになりましたけれど、創業当初から彼らには、“よりヘルシーなコミュニティを育てていく”という大きなミッションがありました。それらが多くの人に受け入れられ、浸透したことで、成長をしていったのではないかと思います。
関: マーケティングという言い方が正しいのか分かりませんが、「正しく伝えること」がないと、結局誰も共鳴してくれません。いくら企業としての良い行いがあっても、それがうまく伝わらなければ、従業員やお客さまには浸透しないですし、企業に対するブランドイメージも向上していきません。しかし日本だとなかなかその部分が理解されず、「正しく伝える」ためのマーケティングコストをかけるのは、嫌がられる傾向にありますよね。
関口: 日本企業の中には、社会に対して素晴らしい活動をしているところがたくさんあるのに、残念ながら知られていないケースが多くあります。もっと、「私たちはこういうことをミッションに掲げています!」「こんな形で社会貢献をしています!」と大々的に打ち出してもいいんじゃないかと思いますね。そこを、私たちがお手伝いできるのかもしれないですけれど。
関: 日本人は、「言わなくても分かる」「わざわざ教えるのは無粋である」という概念が根本的にありますが、本当は、それらは声に出さないと伝わらないですよね。特に、世界市場を相手にしたいのなら、なおさらです。
関口: そうそう、表に出さないから、「あいつら(日本人)は、何かたくらんでいるんじゃないか」と疑われたりしてね(笑)。
リーバイスとか、ユニリーバとか、グローバルの大企業は強いメッセージを持って、サステイナビリティに対する思いを発信しています。最近リーバイスの社長が、大きなカンファレンスで、「サステイナビリティに一生を捧げる」と発言をされたとか。やっぱりそれは、社長のサステイナビリティに対するピュアな気持ちもあると思いますけれど、そこには同時に、「プロフィット(利益)の追求」といった背景もあるわけです。リーバイスのジーンズは若者が履くものですから、ミレニアムだとか、これから出てくる新しいマーケットに対してどうアピールするか、という1つの姿勢を示したんじゃないかと私は捉えています。
マーケティングをする背景に、「利益追求」があるのは然るべきことです。それは、企業の一つの大きなミッションでもありますからね。シェアホルダー(株主)への利益の分配があるわけなので、当然、利益追求は起こるべきだと思いますよ。
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